第322回
「人のまねばかりしていないで、自分で開発しろ!」

私が丸紅の北京支店にいる時に、
山西省のマグネシウム工場と取引がありました。
ここの社長は元々機械の技術者で、
その工場の機械は全て、社長が設計して作ったものです。

ある時、この社長がアメリカに出張し、
アメリカのマグネシウム工場を見学した際に、
マグネシウムの塊を削って、チップにする機械がありました。

社長は機械の中を開けてみたり、
アメリカ人の技術者にいろいろと質問していましたが、
メモを取る様子でもありませんでした。

翌月、山西省の社長の工場に行ってみると、
アメリカの工場で見たのと全く同じ、
マグネシウムをチップにする機械が置いてありました。
我々が知らない内に、
アメリカの会社から買ったのだと思いきや、
社長曰く、自分で作ったとの事。
アメリカの工場でほんの数分、
見たり聞いたりしたものを元に、
全く同じ機械を作ってしまったのです。

この社長、ある意味天才だと思うのですが、
そのオリジナルの機械を作ったアメリカの会社にしてみれば、
たまったものではありません。
長い年月と多大な費用を掛けて、
苦労して開発した製品を、
ちょっと見たり聞いたりされただけで、
全く同じものを作られてしまっては、
商売上がったりです。

この天才社長の様に見たり聞いたりしただけで、
同じ製品を作る域までは行かなくても、
中国の技術者にとって、
オリジナルの製品を買ってきて、分解して調べて、
同じものを作ってしまうぐらいの事は朝飯前です。
この場合、製品の開発費は、
オリジナル製品を1台買ってくる費用のみ、
という事になります。

この様に、中国は後発の強みを生かして、
効率的に経済成長を続けています。
「人のまねばかりしていないで、自分で開発しろ!」
という声が聞こえてきそうですが、
日本人も人の事は言えません。
ほんの30年前の日本は、これと全く同じセリフを、
アメリカから浴びせられていたのですから...。


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