第329回
「日本の二の舞だけは...」

今回の中国政府の金利の引き上げにより、
5年ものの人民元の定期預金金利は
3.60%という高率になりました。
しかし、インフレ率が現在のまま
5%以上で推移するならば、
せっかくの定期預金も逆ざやになってしまいます。

となると、一般庶民は、
現金収入は預金などしないで
すぐにモノに換えた方が良い、と考えます。
更に、出来得る限りの借金をして、
その現金もモノに換えた方が良い、
と考える様になります。

何しろ、インフレの世の中では、
現金や預金は、時間が経てば経つほど
どんどん価値が下がってしまいますし、
逆に借金は、時間が経てば経つほど軽くなっていきます。

こうなると、みんながモノをたくさん買う様になるので、
モノが足りなくなるのと同時に、
中国国内の人民元の流通量は大きくなり、
更にインフレが進む事になります。
そして、インフレが進めば進むほど、
人々は更に手元の現金をモノに換えたり、
借金をしてまでモノを買う様になる、
という循環が生まれます。

日本は、この循環が原因で、
高度経済成長期には
「狂乱物価」と呼ばれるハイパーインフレに悩まされ、
その後の実需を伴わない
借金を原資とする不動産投機は「バブル経済」を生み、
バブルがはじけた後は、その不良債権の処理に
既に10年以上の時間を掛けています。

その間に、日本円は1ドル=360円の固定相場制から
308円への切り上げの後、変動相場制に移行、
円高に次ぐ円高の結果、
現在では1ドル=100円ちょっとと、
元々の3倍以上に上昇しています。

こうした円高の進行により、
日本製品の輸出競争力は低下し、
日本のメーカーはこぞって
「世界の工場」である中国に生産拠点を移転、
国内産業は空洞化し、大量の失業者を出す、
という現在の状況に至っています。

中国経済は現在、
この一連の「日本経済栄枯盛衰物語」の、
ちょうどスタートラインと同じ状況にあります。
中国政府が人民元の切り上げを頑なに拒み、
他の方法でインフレを抑えようとするのも、
「日本の二の舞だけは...」
と考えての事なのではないでしょうか。

中国政府が今後、
日本経済の栄枯盛衰を「他山の石」として
中国経済の舵取りを慎重に行い、
持続可能な経済成長を続けていけるかどうかに、
中国共産党一党独裁体制の存続がかかっている、
と言っても過言ではないと思います。


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