第335回
「竜殺しの剣」殺人事件

先日、上海で、「武器」の貸し借りが原因の
殺人事件が起きました。

加害者である41歳の男性Aは、
「竜殺しの剣」という剣を
被害者Bさんに貸したのですが、
Bさんは借りた剣をすぐに
7,200元(108,000円)で
他の人に売ってしまいました。

怒ったAは、Bさんに対し、
その売却代金を渡す様に求めたのですが、
Bさんが拒否したため口論となり、その結果、
AがBさんをナイフで刺して殺してしまいました。

こうして聞くと、
中国の伝統的な殺人の動機である
「金」と「恨み」が絡んだ、
普通の殺人事件の様なのですが、
この事件が衝撃的なのは、
殺人の原因となった「竜殺しの剣」が、
実在する剣ではなく、
オンラインゲームのデータでしかない事です。

中国では最近、インターネットの普及により、
オンラインゲームの利用者が急増しています。
人気があるゲームでは、
単なるデータでしかない「武器」が、
実際のお金を伴って売買されているそうです。

被害者Bさんは2年前に、
この「竜殺しの剣」が登場するオンラインゲームを
加害者Aから紹介されたそうです。
その後Bさんはこのゲームにのめり込み、
「武器」の購入に10,000元(150,000円)以上を
つぎ込んでいた、との事です。

このオンラインゲームの参加者からすれば、
「竜殺しの剣」は究極の「武器」で、
ものすごい価値のあるものなのかもしれませんが、
はたから見れば、実体の無い単なるデータに
7,200元の値が付いてしまう事自体が非常に驚きです。
7,200元と言えば、上海の普通のサラリーマンの、
月収2〜3ヶ月分です。

しかし、それにも増して、
そんなものが原因のトラブルで生身の人間を殺してしまう、
なんていう事は、既に私の理解の域を越えています。

中国では現在、ものすごい勢いで
インターネットが普及しています。
インターネットの普及は、
新たなビジネスを生み出したり、
既存のビジネスを効率化したりする為に、
非常に有益であり、
今後、中国の持続可能な経済成長を
支えていく原動力になると思われるます。

しかし、その一方で、今後、今回の事件の様な、
インターネットの「負」の側面も、
社会的な問題として
クローズアップされていくのではないでしょうか。


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