第354回
事実上の「民主主義」状態

中国ではここ数年、
政府の役人による汚職が次々に発覚、
「俺たちがこんなに苦しい生活してんのに、
私腹を肥やしやがって。断じて許せん!」
という怒りが民衆の間に広がって行きました。

そうした民衆の政府の役人に対する怒りが、
どんどん貯まって既に臨界点まで来ている為、
何かほんの些細なきっかけがあると暴発し、
暴動にまで発展している様です。

中国共産党中央は、
共産党内部の腐敗により
民衆の怒りが増大していく事を、
最も恐れています。
彼らは、民衆の中国共産党に対する不信感が、
共産党一党独裁政権を転覆させる力がある事を、
よく知っています。
アメリカや台湾なんかより、
国内の民衆の方がずっと怖いのです。

この為、朱鎔基元首相は、
政府の役人による汚職を徹底的に摘発しましたし、
胡錦涛主席も「民衆重視政策」を掲げ、
民衆の怒りを和らげるのに必死です。

中国は共産党一党独裁の国であり、
よくアメリカなどから
「早く民主化せよ」との圧力を受けたりします。
しかし、現在の中国は
全国民が投票する選挙こそありませんが、
共産党に不満があれば、民衆は暴動を起こし、
共産党は暴動が全国に広がって、
政権が転覆してしまうのを恐れて、
民衆の言う事を聞く、という、
事実上の「民主主義」状態になっています。
民衆は投票によってではなく、
暴動によって政治の方向を変えるのです。

今の中国は、むしろ、「民主主義」を通り越して、
「ポピュリズム(大衆迎合主義)」まで
行ってしまっている感さえあります。
以前、日本では小泉首相が「ポピュリスト」である、
との批判を受けていましたが、
私に言わせれば、民主主義国家ではない中国の
胡錦涛主席の方がよっぽど「ポピュリスト」です。

この様に、中央は民衆を敵に回した時の怖さを
よく分かっているのですが、
問題はこの意識が、
地方の末端までなかなか浸透していない事です。
今回の一連の暴動も、地方政府の役人の体質が、
旧態依然としていた為、
起こったのではないかと思われます。


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