第355回
「共産党幹部だったら、何をやっても許される」

以前の中国共産党では、
「職権を濫用して私腹を肥やしても、
権力の中枢にいれば、
それはいくらでも握りつぶす事が出来る。
汚職や横領などで逮捕される共産党幹部は、
権力闘争に負けた人たちである」
と考えられていた節があります。

しかし、
「紀律の乱れが、共産党一党独裁体制を滅ぼす」
という事が、比較的早い時期に浸透していた中央では、
各国家機関、国有企業の
党組織に設置された紀律検査委員会が、
徹底的に汚職や横領を取り締まりました。

私が丸紅の北京支店で石炭貿易の仕事をしていた時の、
中国側の交渉相手は主に、
中国煤炭進出口総公司(中煤公司)という
国有の石炭貿易会社でした。
この中煤公司では、取引先からもらった
200元(3,000円)相当以上のプレゼントは、
全て、会社に報告の上、
没収される事になっていました。

ですので、日本から丸紅本社の出張者が来て、
中煤公司の幹部に
ネクタイや日本の工芸品などのお土産を渡すのですが、
それらのお土産は、本人の手には入りません。
全て、会社に没収されてしまいます。

更に、彼らは、決して1人の時には
お土産を受け取りません。
必ず、他の社員がいる所で受け取って、
その場は「お気遣いを頂いて、
どうもありがとうございます」などと言うのですが、
会談が終わると、きちっと会社に報告して、
会社側に引き渡してしまいます。

少しでも怪しい行為があれば、
いつ誰から刺されて、
権力の座から引きずり下ろされるか分かりませんので、
中煤公司の人はみんな、お土産や接待に対しては、
いつもピリピリしていました。

これが、地方に行くと、
「共産党幹部だったら、何をやっても許される」
みたいな風潮がいまだに残っています。

地方に行って白酒(ばいじょー)の宴会をやった後に、
泥酔一歩手前の国有企業の総経理が
車を運転して帰ろうとするので、
「総経理、そんな状態で運転したら捕まりますよ」
と言うと、
「警察署長は俺の同級生だから、
完全没問題(わんちゅえんめいうぇんてぃー、
全然問題ない)」などと答えられたりします。

地方では法律より共産党幹部の方が偉いのです。


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