第367回
「世界の工場」から「地球最後の巨大市場」へ

「民工」は、中国の急速な経済成長を、
安くて豊富な労働力で支える、
という重要な役割を担っているのですが、
「農民をやっているよりはいい」という理由で、
なりたい人がいくらでもいた為、
安い給料でこき使われてきました。

例えば、広東省に出稼ぎに来ている「民工」の給料は、
この10年、ほとんど変わらなかった、
と言われています。
その間、経済発展に沸く広東省の人たちの収入は
どんどん上がっていたにも関わらず、です。

今回の人手不足現象は、
「民工」の給料が安いまま据え置かれていた為、
徐々に上がってきた内陸部の人たちの収入が
都会の「民工」の給料に追いついてしまった、
という事が原因で起こったのではないかと思われます。

内陸部でも都会の「民工」並みの給料が稼げる、となれば、
こうしたUターン現象が起こるのは、
至極当然の事です。

「内陸部にいくらでも余剰労働力があるので、
中国の単純労働力の人件費は上がらない」
というのが今までの常識でした。
しかし、今後、中国に進出する日本企業は、
こうした給与水準の全体的な底上げが発生する事を
計算に入れておいた方が良さそうです。

一方で、「民工」や農民たちの
所得水準が上がる、という事は、
中国の消費の裾野が広がる、という事を意味します。

今回の現象は、中国が
「圧倒的な人件費の安さを背景とした世界の工場」
から、
「地球上に残された最大かつ最後の巨大市場」
に脱皮する兆し、
と見てよいのではないでしょうか。


←前回記事へ 2005年2月28日(月) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ