第371回
「引越業はサービス業ではなく、運送業である」

どうして北京の地元引越会社の作業員は、
長期間にわたって風呂にも入らず、
洗濯もしないのでしょうか。

それは、中国では、
「引越業はサービス業ではなく、運送業である」
と捉えられている為です。

「作業員を清潔に保って、気持ち良くお引越して頂こう」
などという発想は全くなく、各社とも何しろ、
「如何に安く運ぶか」に重点を置いています。
故に、引越会社にとって、
作業員は汚かろうが、臭かろうが、
安い給料でたくさんの荷物を運んでくれる丈夫な人であれば、
それで良いのです。

更に、引越会社同士の価格競争が激しい事も、
作業員の質を下げる原因になっています。

中国の引越業界は、
トラックを買って、作業員を集めてくれば、
誰でも今日から引越会社の社長になれる、というぐらい、
参入障壁の低い業界ですので、
北京には零細引越会社が腐るほどたくさんあり、
街を走る引越トラックに書かれている会社名も、
聞いた事もないものがほとんどです。

彼らは、
「他社が200元(3,000円)なら、
うちは180元(2,700円)でやります!」とか、
「うちは150元(2,250円)でできます!」とか、
ひたすら値引きでお客さんを集めようとします。

となると、作業員に払う給料は、
自ずと非常に低くなりますし、
そんな給料でも集まってくる人たちは、
風呂や洗濯にはあまり興味のない人種になります。

ただ、引越をする消費者側も、
「引越は自分たちでは運べない重いものを
運んでくれさえすれば良い。
サービスなんかいらないから、
その分代金を安くしてくれ」
という人たちがほとんどですので、
「中国引越業界のサービス業化」は、
まだまだ先になるのかもしれません。


←前回記事へ 2005年3月9日(水) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ