第405回
競争社会はストレス社会

「競争」は、技術を発展させたり、
サービスの質を向上させたりする為には、不可欠です。

競争相手に勝って生き残る為には、
よい良いモノやサービスを、
より安く供給しなければなりませんので、
みんな必死で考えて努力する結果、
技術やサービスが向上するのです。

一方、社会主義国家では、
国家が作った計画に従って、
国有企業に役割が割り振られます。
役割が重複する事がないので、
一見、非常に効率的なのですが、
割り当てられた役割の中では、
その企業が市場を独占する事になりますので、
良いモノを作ろうが、悪いモノを作ろうが、
必ず売れます。

必ず売れるなら、国有企業は
一生懸命考えて努力をする必要はありません。
悪いモノしか無くても、
消費者は他に選択肢が無いのですから...。

しかし、「これではいかん」と考えた中国政府は、
社会主義国家であるにも関わらず、
資本主義国家のお家芸である競争原理を利用して、
今日の経済発展を達成しました。
中国にはまだまだ、
競争原理が浸透していない分野がたくさんありますが、
WTO加盟4年目を迎え、
今後は、外国企業との競争も含め、
更に競争が激しくなっていく事が予想されます。

さて、本格的な競争社会に突入しつつある中国ですが、
競争社会では負けそうな方は必ず無理をします。
無理をすれば、
今回の尼崎の様な事故が起こる可能性が高まります。

また、競争社会では、
個々人にかかる負担もどんどん大きくなります。
今までの国有企業の様に、
朝から卓球をしていたり、
1日中同僚と茶飲み話をしていては、
すぐに競争に負けてしまいます。
競争に勝つ為には、中国でも日本の様に
毎日、当たり前の様に
残業をしなければならなくなるかもしれません。

少しのミスも許されなかったり、
連日の残業でプライベートの時間が少なくなったり、
仕事の責任が重くなったり。
中国では今後、競争の激化に従って、
日本の様なストレスの大きい社会になっていく事が
予想されます。

競争社会の到来により、
中国の技術やサービスは向上し、
物質的にはどんどん豊かになっていくのでしょうが、
それと同時に、人々のストレスはどんどん高まりそうです。
将来的には中国も
「物質的には豊かだが、精神的には貧しい」という、
日本モデルに近付いて行くのではないでしょうか。


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