第404回
「乗せてあげるんだから、ありがたく思いなさいよ!」

中国では鉄道は国家の独占事業です。

以前は、鉄道が無ければ、物を運んだり、
人が移動したりする事ができませんでしたので、
鉄道を管轄する官庁である鉄道部は、
「老大(らおだー、長兄)」と呼ばれ、
他の省庁より格上、とされていました。
中国では鉄道部はとっても偉かったのです。

航空網の整備が進んだ現在でも、
大型貨物の輸送や、
空港がない僻地への移動などには、
鉄道を使わざるを得ません。
ですから、中国の鉄道は以前に比べて
かなりサービスが良くなってきたとはいえ、
未だに「乗せてやる」という態度に変わりはありません。

私は以前、河南省の地方都市に出張する際に、
目的地が鉄道の沿線であった為、
飛行機ではなく、鉄道で行く事にしました。
夜中の12時近くに
北京西駅を発車する予定の列車だったのですが、
いつまで経っても検札が始まらず、
結局、検札が始まったのは、翌朝10時過ぎでした。

「10時間後に発車します」と言ってくれれば、
近くのホテルにでも泊まって、翌朝出直すのですが、
近くの駅員を捕まえて、
「いつ発車するんだ」、
「なんで遅れてるんだ」
などと訊いても、
「不知道(ぶちだお、知らない)」
を繰り返すばかり。

いつ検札が始まるか分かりませんので、
駅を離れる訳にもいかず、
仕方なく、北京西駅の構内に新聞紙を敷いて、
その上で夜を明かす事になってしまいました。
臭いし、汚いし、寒いし。
これはつらかった。

翌朝10時過ぎにようやく改札口が開きましたが、
「ごめんなさい」の一言も、遅延理由の説明も無く、
何事も無かった様に検札が始まりました。
いかにも
「乗せてあげるんだから、ありがたく思いなさいよ!
文句があるんだったら飛行機で行きなさい!」
と言わんばかりの態度です。

こんな態度がとれるのは、
中国では鉄道が国家の独占事業だからです。
並行する私鉄と競争している時に、
こんな態度をとったら、
乗客を根こそぎ取られてしまいます。

やはりサービスというのは、
競争が無いと良くならないものなんだなぁ、
という事が身に沁みて分かった出来事でした。


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