第417回
「お前は天才だ!」

中国の親たちが子供を甘やかすのには
理由があります。

1979年に始まった一人っ子政策の影響で、
今はどこの家庭も子供は一粒種。
家族や親族しか信じられない中国で、
血のつながった子供は、
親にとってかけがえのない存在ですので、
1人しかいない子供には、
溺愛、とも言える愛情を注ぎ込みます。

更に、一人っ子の
「小皇帝(しゃおほぁんでぃー)」は、
両親だけでなく、
父方、母方、それぞれの
おじいちゃん、おばあちゃん、
合計6人で甘やかしますので、
子供はどんどん増長します。

また、今の親の世代が子供の頃は、
文化大革命がようやく終わって、
改革開放政策が始まったばかりの時代。
物資が乏しく、お菓子やおもちゃなどを
買い与えられる事もありませんでしたので、
「自分の子供には、自分と同じ様な
哀しい思いはさせたくない」という事で、
更に甘やかす事になるのです。

さて、そんな感じで
大いに甘やかされて育った中国の子供たちは、
働き始めて、初めて社会の厳しさを知ります。
特に、大学を卒業したばかりの新入社員は、
小さい頃から「お前は天才だ!」と
言われ続けてきましたので、
手に負えないぐらい天狗になって会社に入ってきます。

日本の大学進学率が50%を超えているのに対し、
中国の大学進学率はまだ20%弱。
大学進学率は以前に比べ大幅に上がったとはいえ、
中国ではまだまだ、大卒は「学士様」なのです。

私が北京で起業するに当たって雇った女性も、
大学を卒業したばかりでした。

最初のうちは張り切って仕事をしてくれていたのですが、
大学で習得した高度な知識と、
当社に入ってからの地道な仕事とのギャップに
かなりのショックを受けた様で、いつも
「私はこんな事をする為に、大学で勉強したんじゃない」
みたいな事を言っていました。

嬢ちゃん。
仕事、ってーのはな、
そういうもんじゃないんだよ。

そういう事がありましたので、
それ以降、私の会社で中国人スタッフを雇用する際には、
新卒は採用の対象から外し、大学を卒業した後、
どこかの会社に入社して、鼻っ柱をへし折られて、
人生の酸いも甘いも噛み分けた人のみ、
来て頂く事にしました。


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