第429回
海外旅行に行く最大の目的

中国ではこの7月1日から、
新たな通関申告制度が導入され、
国外で購入した物の合計額が
5,000元(75,000円)を超えると
課税される事となりました。

これは海外旅行をする中国の人たちにとっては
大ショックです。
なぜなら、中国の人たちにとって、
お土産の購入は、海外旅行に行く最大の目的、
といっても過言ではないからです。

中国の人たちは、海外旅行に行くと、
ものすごい金額の買物をします。
海外に行けば、中国では売っていない様な、
電気製品やブランド品が安く買えますので、
自分で使うものや、家族親族へのお土産、
仕事関係の人へのプレゼントなどを
大量に買い込むのです。

一方で、旅行代金は極力抑えます。
泊まる所がみすぼらしかろうが、
出てくる食事がまずかろうが、どうでもよく、
何しろ、そんな金があれば、
少しでもお土産代を増やしたい、という事の様です。
ですので、北京の日系旅行会社関係者は、
「一部でもいいから、
買物の予算を旅行代金に回してくれれば...」
と嘆いています。
そのぐらい、極端に差をつけるのです。

私が丸紅の北京支店にいた時に、
「出張」という名目の観光旅行の為に、
国有企業の幹部を日本に連れて行った事がありますが、
彼らもご多分に漏れず、秋葉原に行って、
電気製品を大量に買い漁りました。

余りに高額なモノをたくさん買うので、
もしかしたら、中国に持って帰って売るのではないか、
と疑ってしまったのですが、
彼らの志はそんな低い所にはありませんでした。
彼ら曰く、それらの電気製品は省のお役人に
お土産としてプレゼントするのだそうです。
なるほど、確かにその方が、
電気製品そのものを売るより
ずっと大きな利益につながります。
「エビでタイを釣る」というやつですな。

今回の施策により、
国外で購入した物の合計額が
5,000元を超えた場合、
金銀製品などの宝飾品は10%、
アパレル製品やカメラなどの電気製品、
化粧品、時計は20%、
たばこ、酒類は50%の関税が
それぞれ課される事となります。
せっかく海外のデューティーフリーで
免税品を安く買っても、
中国に持ち帰る時にこんなに関税を取られては、
全く意味がありません。

海外旅行に行く最大の目的を奪われた中国の人たち。
もちろん、関税をきちんと払えば、
海外で買ったモノを中国に持ち込む事はできるのですが、
今回の施策が、勃興しつつあった
中国海外旅行産業の発展に与える影響は
小さくないのではないでしょうか。


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