第433回
人民元切り上げの目的

先々週、7月21日に人民元は約2%切り上げとなり、
対米ドルの人民元の為替レートは、
1ドル=8.11人民元となりました。
従来の予想より小幅な切り上げだったため、
中国ビジネス関連企業の反応はいたって冷静ですが、
だれもが「これで終わりになるわけがない」と考えています。

今回の切り上げに関しては、
中国がアメリカの圧力に屈した、だの、
人民元の切り上げを期待した
海外からの投機を抑えるため、だの、
いろいろな見方がありますが、
私は、中国政府が
「人民元を切り上げると、
国内経済がどの程度のダメージを受けるのか」
を見極めるために試しにやってみた
ということなのではないかと思っています。

今の中国にはアメリカの圧力に屈する理由がありません。
「世界最大且つ最後の巨大市場」である中国と
お付き合いしたい国はいくらでもあります。
もちろん、アメリカと仲良くできるなら、
仲良くするに越したことはないのですが、
どこかの国のように、
しっぽを振ってついていく必要は全くありません。

むしろ、
「アメリカの圧力に屈して、人民元を切り上げた」
ということになれば、
国民から外交政策の弱腰を非難され、
政情不安の一因となる可能性もあります。
中国政府としては人民元を切り上げたいのに、
アメリカが圧力をかければかけるほど、
人民元の切り上げができなくなる、という、
「北風と太陽」状態が続いていた、
というのが本当のところだと思います。

また、人民元の切り上げを期待した
海外からの投機を抑えるには、
なにも人民元を切り上げる、というような、
根本的なルールを変えるようなことをしなくても、
ピンポイントで新しい税金を作れば、
十分に熱を冷ますことができます。

中国では、この6月1日から、
投機目的の不動産投資に営業税を課すことにしました。
具体的には、購入後2年を経過していない
不動産を売却した場合には、これを投機とみなし、
売却金額の全額に5.5%の営業税を課す、というものです。

この発表を受けて、過熱ぎみだった上海の不動産は、
6月1日の施行を待たずに、30-40%ほど、
一気に下落したと言われています。
人民元の切り上げを見込んで、
上海の不動産を高値で買ってしまった人は、
わずか2%の切り上げのために、
30%も40%も損したことになります。

人民元の切り上げは
そんなどうでもよい目先のことが目的ではなく、
「国内産業の競争力強化」という、
今後の中国の先行きを左右するような、
重要な国内経済政策が
目的なのではないかと思うのです。


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