第475回
成金はどうして「猫足」を好むのか

日本の高度経済成長期もそうでしたが、
ここ中国でも、経済成長が始まって
成金が続出するようになると、
彼らは「猫足」の家具に代表されるような、
中世ヨーロッパ的豪華さの家具を買ったり、
思わず「おまえの家は、ヴェルサイユ宮殿か!」
と言いたくなるような、
豪華できらびやかな内装をしたりし始めました。

成金をターゲットにした高級マンションも、
「羅馬花園(ろーまーほぁゆぇん、ローマガーデン)」とか、
「維多利亜公寓(うぇいどりやーごんゆぃー、
ヴィクトリアアパートメント)」とか、
そういった彼らのヨーロッパ貴族に対する
あこがれゴコロをくすぐるような名前を付け、
広大な敷地に、ヨーロッパ風の彫刻や
モニュメントを配したのでした。

成金はどうして「猫足」を好むのか。

それは多分、日本の成金も、中国の成金も、
若い頃には貧乏のどん底にあって、
ひどい苦労をしたからなのではないかと思います。
苦労の末、運良く、経済成長の波にうまく乗り、
懐に大金が転がり込んで来たため、
「今までの人生、取り戻しちゃる!」
ということで、無理にきばって豪華な生活を
しようとするのではないでしょうか。

もしかすると、成金の人たちが、
貧乏な頃に夢見ていた豪華な生活の象徴が
「猫足」なのかもしれません。

ただ、最近、中国の成金の趣味も
だんだん良くなりつつあります。

彼らが買う家具や内装の色調は、
重厚な濃い色から洗練された薄い色へ。
つくりも「猫足」系から、
「シンプルライフ」系へと変わってきています。

高級マンションの売り文句にも、
「クオリティオブライフ」とか、
「ポストラグジュアリー」とか、
そういった、
「シンプルで質の高いものを買うことこそが、
本当の贅沢なんだよ」と主張するものが、
見られるようになってきました。

日本の成金が、高度経済成長期から、
バブル経済の時ぐらいまで、
何十年もずっと「猫足」好きだったことを考えると、
中国の成金がほんの数年で「猫足」を卒業した、
というのは驚異的なスピードです。

中国はデザインやセンスの分野では、
日本に比べて非常に遅れていますが、
後発だけに、追いつくのも早いのです。


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