第512回
「安物買いの銭失い」

不信社会先進国である中国では、
人々はモノを買う場合でも、
へんなモノをつかまされないように
細心の注意を払います。

彼らは、同じモノならば、値段が少々高くても、
誰もが名前を知っている大手企業のモノを
買う傾向があるように思います。
なぜなら、中国では日本と違って、
へんにけちって安いモノを買うと、
ひどい目に遭うことがあるからです。

例えば、スーパーに行って牛乳を買う場合。
同じ内容量で、乳業大手・蒙牛の牛乳が10元(150円)、
知らない会社の牛乳が8元(120円)で売っていたら、
中国の人たちは迷わず、蒙牛の牛乳を買います。

いくら安くても、
知らない会社が生産した牛乳を飲んで、
万一、お腹でも壊したら大変です。

わずか2元(30円)をけちったせいで、お腹を壊して、
治療費や薬代が何百元(何千円)もかかったら、
それこそ「安物買いの銭失い」になってしまいます。

その点、蒙牛は有名な大手企業なので、
品質管理もしっかりしているだろうし、
変な製品を市場に流すこともないだろう。
中国の消費者はこんな判断をするのです。

ですので、中国の消費者を対象とするマーケットでは、
有名な大手企業はどんどん儲かりますし、逆に、
無名の中小企業が新規に参入するのは非常に難しいのです。

蒙牛は乳製品業界では最後発でしたが、
こうしたマーケットの特徴をよく理解していました。
同社は、資本金の1/3という巨額の投資をして、
全国放送である中央電視台で大々的なコマーシャルを打ち、
まずは、知名度を上げることに全力を注ぎました。
そして、この大胆な広告戦略が功を奏し、
蒙牛の業績は急上昇、一躍大手の仲間入りをし、
後発のハンデを克服したのです。

さすがですな。蒙牛。

日本では、無名の会社が作った牛乳でも、
日本産であれば、まず、品質に間違いはありませんので、
同じ量ならば安い方を買う、
という人が多いかと思います。

しかし、不信社会中国では、
ほんの2元(30円)をけちったせいで、
とんでもないものを飲まされ、体を壊してしまう、
ということが、まだまだあり得るのです。

こんな中国マーケットでモノを売る会社にとって、
ブランド構築の重要性は日本マーケットの比ではありません。

逆に言えば、一旦、中国の人たちに
「信頼できるブランド」と認識してもらえば、
あとは黙っていても
業績が上がっていくのではないでしょうか。


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2006年1月30日(月)

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