第521回
「『格差社会』は悪いことではない」

日本では最近、「格差社会」という言葉が
よく聞かれるようになりました。

「勝ち組」はどんどん金持ちに、
「負け組」はどんどん貧乏になって、
金持ちか貧乏人しかいなくなってしまう、
という2極化した状態が「格差社会」です。

最近では、小泉首相が
「「格差社会」は悪いことではない」と発言して、
物議をかもしたりしています。

曰く「今までが悪平等だったわけであり、
今後は、がんばった人が「勝ち組」に、
がんばらなかった人が「負け組」になるのは
ある程度仕方ない。
ただ、「負け組」の人たちにも、
再起の機会とセーフティーネットは提供する」
とのことです。

お説ごもっとも。
反論の余地はありません。

しかし、こんなことは、日本が、
ニートとか、ホームレスとか呼ばれる
働く意欲のない人たちでも、
餓死することもなく生きていけてしまうぐらい
豊かな国だから言えることであって、
国民の大部分が「負け組」である中国では、
「格差社会」の是正は、一刻を争う緊急課題です。

日本で報道される中国の姿は、
未曾有の高度経済成長によって、
豊かになり続ける「光」の部分ばかりですが、
そんなものは、都市部のごく一部の人たちの話であり、
その後ろには、電気もガスもない横穴式住居に住んで、
毎日、朝から晩まで働き続けても、
家族が食っていけるだけの収入が得られず、
返せるあてもない借金は膨らみ続け、
農薬飲んで一家心中しようかどうしようか
迷っているような農民たちが、
「影」の部分として果てしなく広がっているのです。

こうした社会の底辺にいる人たちは、
もうこれ以上落ちることはありませんので、
暴動で何かがかわる可能性が少しでもあれば、
暴動に参加しますし、
犯罪に手を染めて一発逆転できる可能性があれば、
危ない橋も渡ります。

「負け組」がどんどん増えると、
社会の治安は悪化しますし、
へたをすると暴動が全国に広がり、
中国共産党一党独裁体制を揺るがすような事態に
発展することもないとは言えません。

こんな状態ですので、
中国共産党は3農政策を強化し、
都市から吸い上げた富を農村に還流させることにより
「格差社会」を是正し、
治安の改善、体制の安定を図ろうとしています。

胡錦涛国家主席は口が裂けても
「「格差社会」は悪いことではない」
なんてことは言えないのです。


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2006年2月20日(月)

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