第528回
安くて品質の良いニセモノの価値

中国のニセモノのもう一つの特徴は、
品質が非常に良いことです。

欧米の有名ブランドのニセモノですから、
デザインが良いのはあたりまえですが、
素材や縫製も実にしっかりしています。

更に、洋服やバッグに付いているタグや説明書、
はたまた、商品を入れる箱や袋まで、
非常にホンモノっぽく仕上がっています。

中には、「これは実は、
欧米の有名ブランドの中国工場の従業員が、
小遣い稼ぎのために横流しした
ホンモノなんじゃないか」と思わせるほど、
立派なニセモノもあります。

デザインも品質も良い洋服やバッグを、
こんなに安い値段で作ることができる工場ならば、
別に、リスクを冒して
欧米の有名ブランドのニセモノを作らなくても、
独自のブランドで十分にやっていけると思うのですが、
こういうニセモノを作っているような町工場では、
技術はあっても、独自ブランドで
販路を切り開くことなどできないのでしょう。

ニセモノのブランド品を製造したり販売したりするのは、
中国でももちろん違法です。
中国が国際社会の一員としての存在感が増せば増すほど、
ニセモノブランド品を放置しておくことはできなくなります。
今後、中国のニセモノブランド品の
製造、販売に対しての取り締まりは、
どんどん厳しくなっていくことが予想されます。

ニセモノの氾濫は、
世界のファッションデザインの進歩を遅らせます。
ファッションデザイナーは
ニセモノが氾濫すると思ったほど儲からなくなり、
儲からない商売には人材も集まりませんので、
傑出したデザイナーが輩出される可能性が
少なくなってしまうのです。

しかし、デザインも品質も悪い
中国ブランドの洋服やバッグが、
「ホンモノ」というだけの理由で、
ニセモノの何倍もの値段の値札を付けられて、
偉そうにデパートに陳列されているのを見ると、
「モノの価値というのはいったいどこにあるんだろう」
ということを、改めて考えさせられます。


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2006年3月8日(水)

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