第532回
「おまえ、よそ者じゃろ!」

今後、日本企業の中国ビジネスの成否は、
現地で優秀な人材を確保できるかどうかにかかっている、
と言っても過言ではないと思います。
なぜなら、いくら中国語がうまくて、
商品知識が豊富な日本人駐在員を送り込んでも、
中国でモノを売ることに関しては、
中国の人たちにはかなわないからです。

そうした優秀な人材を確保するための一つの方法は、
「一国一城の主」である個人事業主や
個人企業とパートナーシップを組むことです。
フランチャイズや代理店方式を使うと、利益率は落ちますが、
販売網を急速に広げることができますし、
良いパートナーと組むことができれば、
一生懸命売ってくれて、
利益率の減少を売上の増加で補ってくれるかもしれません。

更に、中国全土に販売網を構築する場合には、
フランチャイズや代理店方式で、
それぞれの都市の地元の企業と組むことが不可欠です。

中国は外から見ると一つの国のように見えますが、
中国の人たちの気持ち的には、
各省や自治区がそれぞれ一つの国のような感じになっており、
各自、自分の故郷に異常な愛着とプライドを持っています。
ですので、中国では、地元の人とよそ者が、
同じモノを売りにきたら、絶対に地元の人から買うのです。

同じ中国語を話す漢民族なのに、と思われるかもしれませんが、
中国には「一山越えると言葉が違う」と言われるほど、
たくさんの方言があります。
地元の人のフリをしていても、ちょっとしゃべれば、
すぐに「おまえ、よそ者じゃろ!」と見抜かれてしまいます。

特に、両方がそれぞれ中国ナンバーワンの都市だと思っている
北京人と上海人はヒジョーに仲が悪く、
お互いに悪口ばかり言い合っています。
外国人である私でさえも、上海に出張に行くと、
北京から来た、というだけで、
「柳田、おまえの話す中国語は
北京訛りが入っていて気持ちが悪い。
外国人なんだから、ちゃんとした中国語を勉強しなさい」
と言われてしまいます。

上海人が話す中国語が
「ちゃんとした中国語」だとはとても思えず、
北京訛りの入った北京話(べいじんほぁ)の方が
よっぽど「普通話(ぷーとんほぁ、標準語)」に
近いと思うのですが、
そんなことは口が裂けても言えません。

こんな状況ですので、上海でモノを売るときには、
上海人に上海話(しゃんはいほぁ)で売りに行かせるべきであり、
間違っても、北京人のトップセールスマンを上海に転勤させる、
なんてことはしてはいけないのです。


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2006年3月17日(金)

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