第538回
共産党員のモラル向上

中国共産党員は、2005年末の時点で7,080万人と
7,000万人を超えました。
中国の人口を13億人とすると、
全人民に占める共産党員の割合は5.4%。
ざくっと言って、中国人民の
20人に1人が共産党員、ということになります。

共産党員は、農民と工場労働者の先鋒として、
人民を率いていくのと同時に、
献身的に人民のために服務し、
もし、自分の階層で解決できない問題があれば、
それを人民の民意として、
上の階層の共産党組織に上げて
解決を図る義務があります。

簡単に言えば、
中国の人民1人1人には参政権はありませんが、
各階層に深く入り込んでいる共産党員が、
19人の非党員の意見を吸い上げ、
その意見を民意として、
国や地方自治体の政治に反映させる、
という仕組みになっています。

このシステムがうまく回れば、
中国は共産党一党独裁体制と言いつつも、
比較的民主主義に近い形で
政治が行われるはずだったのですが、
そうは問屋が卸しませんでした。

イギリスの歴史学者、J.E.アクトン卿曰く、
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」。

一部の共産党員は、その政治的権力を、
人民のためではなく、
自分のために使い始めました。

税関長が密輸を見逃す見返りとして賄賂をもらう、
役人が管轄している国有企業の資産を、
タダ同然で自分の親類縁者に売却させる、
警察署長が自分の知り合いの犯した犯罪を
握りつぶす、などなど。

朱鎔基が首相になってから、
中国政府は次々と大型の汚職事件を摘発し、
関係した共産党員は
次々と死刑になっていきましたので、
北京などの大都市においては、
汚職は以前に比べてかなり減ったと思います。
しかし、田舎に行けば行くほど、
中央の目が届かないのを良いことに、
一部の共産党員の
やりたい放題ぶりは激しいように思います。

今回の「人大」期間中に、胡錦涛国家主席は、
腐敗の深刻な共産党幹部と、
党離れが進む青少年に向けて、
名誉なこと(栄)と恥ずべきこと(恥)を
明確に分けるために、
「八栄八恥(ぱーろんぱーち)」
という講話をしました。

「八栄」とは
「祖国熱愛、人民奉仕、科学崇拝、勤勉労働、
団結互助、誠実信頼、法規順守、刻苦奮闘」、
「八恥」とは
「祖国危害、人民背離、無知蒙昧、安逸無労働、
自分勝手、利益優先、違法乱規、贅沢三昧」です。

本来ならば、一生を賭して
人民に奉仕しなければならないにも関わらず、
こんな基本的なことを
国家主席にわざわざ言わせるほど
地に落ちてしまった共産党員のモラル。

この全国7,000万共産党員のモラル向上こそが、
民衆の中国共産党に対する不満を和らげ、
暴動を減らし、国内の政情を安定させる
根本的な解決方法なのではないか、と思います。


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2006年3月31日(金)

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