第540回
1km=1年のタイムスリップ

どんどん近代化され、
どんどん東京に似てくる北京の街。

北京に住んでいる者にとって、
生活が便利になることは
大変喜ばしいことではあるのですが、
その一方で、古き良き
「老北京(らおべいじん、昔ながらの北京)」
の雰囲気が失われていくことに、
一抹の寂しさも感じます。

昔から北京に住んでいる日本人の中には、
「同じ中国でも上海には住みたくない」
という方も多くいらっしゃいます。
彼らに言わせると、北京には「いかにも中国!」
という雰囲気が充満しているが、
上海は近代化が急速に進んでしまい、
中国らしい雰囲気が失われてしまった、
とのことです。

自分は「中国」に住みたいのであって、
中途半端に近代化した、
「中国以上日本未満」の上海に興味は無い、
ということです。

ただ、北京もこのまま近代化が進んでいくと、
やがて、「いかにも中国!」
という雰囲気が失われ、
上海のような「中国以上日本未満」の街に
なってしまう可能性もあります。
そんなこともあって、
いずれは壊されるであろう胡同を、
今のうちに見ておきたい、
という人が多いようで、
人力車で胡同を回る、
胡同ツアーが人気、と聞きます。

しかし、ご安心ください。
近代化が進んでいるのは、北京の市街地だけ。
市街地から10kmも離れれば、
そこには、私が10年前に北京に来たときに見た情景、
そして、10年前の人々の生活が今も残っています。

レンガの家、汚い公衆便所、
舗装されていないデコボコ道、荷車を牽くロバ、
道端でもくもくと煙を上げる
羊肉串(やんろうちょわん)の屋台、
そして、カーキ色の綿入れコートを着た人々。

「老北京」の下町の象徴である胡同こそ無いものの、
昔はどこにでもあったのに、近代化の中で、
北京の市街地ではいつのまにか
見かけることがなくなってしまった懐かしいものが、
そこには全て揃っています。

中国の近代化は点の近代化です。
ですので、市街地から離れれば離れるほど、
近代化が遅れています。
私の感覚では、市街地から1km離れるごとに、
1年タイムスリップする感じです。
10km離れれば10年前、
50km離れれば50年前の中国の姿が、
そのまま残っています。
それも、博物館などではなく、
実際の生活の現場として...。

日本から北京に旅行に来られる方の中で、
「近代化された北京だけでなく、
昔の北京がどういう雰囲気だったか見てみたい」
という方は、是非、郊外や農村まで足をのばして頂き、
1km=1年のタイムスリップを
楽しまれることをおススメします。


←前回記事へ

2006年4月5日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ