第549回
砂漠化でゴーストタウンと化した旧北京市

今年の北京の春は、黄砂がひどいです。

浮遊する砂で空は毎日まっ黄色。
外を話しながら歩いているだけで、
口の中は砂でじゃりじゃり。
ちょっと油断して、家の窓を
開けっぱなしにしようものなら、
家中砂だらけになってしまいます。

特に、風の強い日はまさに
「砂嵐」という表現がピッタリの状況となり、
顔に砂つぶてがビシビシと当たってとても痛いです。

夏暑く、冬寒く、1年を通じて
極度に乾燥している北京の半砂漠気候は、
私個人的には日本の蒸し蒸しした気候より
ずっと好きなのですが、
「砂嵐」だけはさすがに好きになれません。
「砂嵐」の日、
やんごとない事情で外出することになってしまうと、
「北京は人間の住むところではない」
とつくづく思います。

この黄砂、
内モンゴルあたりの砂漠から
飛んでくると言われていましたが、
最近では、北京のすぐそばまで砂漠が迫ってきており、
それが、北京の黄砂を毎年ひどくしているようです。

一説によれば、
砂漠は既に北京の街から
100kmほどのところまで迫ってきており、
毎年3.4kmの速さで
北京の街に向かって広がっているそうです。
この勢いで砂漠化が進むと、あと30年ほどで、
北京は砂漠になってしまうそうです。

そうなれば、北京市は一生懸命作った道路やビルを捨てて、
どこか、砂漠でない場所に遷都をしなければなりません。
砂漠化でゴーストタウンと化した旧北京市。
このひどい「砂嵐」を見ると、
そんな近未来がグッと現実味を帯びてきます。

北京周辺に限らず、
中国の砂漠化は激しいものがあります。
中国でこの30年で砂漠化した面積は、
過去2000年間で砂漠化した面積と同じだそうです。
なぜ、そんなに急速に砂漠化が進んだのか。
その元凶は経済発展に伴う、
森林伐採量の増加です。

経済発展と自然保護。
短期的に見れば、森林の伐採は経済発展には不可欠ですが、
森林伐採による砂漠化で遷都、ということになれば、
その経済的損失は甚大です。

世界が今まで経験したことのない規模で
経済発展を遂げようとしている中国。
中国政府は今後、
自然を保護しながら経済発展を持続する、
という難しい舵取りを迫られることになります。


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2006年4月26日(水)

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