第548回
反日デモから1年

昨年4月の北京での反日デモから1年が経ちました。

自分が住んでいる家の近所で暴動が起こる、
なんていうことは今まで体験したことがなかったですし、
更に、その暴動のターゲットは自分を含む日本人、
ということですから、
中国に長く住んだおかげで神経がかなり太くなり、
ちょっとやそっとのことでは動じなくなった私も、
デモの当日はさすがに緊張しました。

私の住んでいるアパートメントの住人は、
ほとんどが日本人ですので、
それを聞きつけたデモ隊が、
なだれ込んできたらどうしよう。
いつもは厳重な警備で
アパートメントの安全を守ってくれている
中国人の警備員さんも、
デモ隊が押し寄せて来たら入れちゃうんだろうなぁ、
などなど、いろいろなことを考えました。

しかし、そんな心配も杞憂に終わり、
翌日からは何事もなかったかのように、
普段の北京の街が回り始めたのでした。
無残に壊された一部の日本料理店や
日本関係の建物を除いては...。

普通、こんなことがあると、
「日中関係はこのままではいけないのではないか」
という議論が盛り上がってもよさそうなものですが、
その後も日本では中国に強硬姿勢をとる
タカ派の政治家が人気を集め、
日中関係は悪化の一途をたどって、
1年の月日が過ぎました。

その間、日本では企業業績が良くなって
株価が上がったり、
国内で様々な大きな事件が起きたりして、
日本国民の関心は専ら日本国内の出来事に向けられ、
あれだけ熱狂的な
中国ブームに沸いた国とは思えないほど、
ほとんどの人が中国に
興味を抱かなくなってしまったのでした。

それが証拠に、昨年後半、
この「中国ビジネスのススメ」を書籍化するべく、
いくつかの出版社に売り込みを図ったのですが、
ある編集者の方から
「柳田さんのコラムはおもしろいんだけど、
こんな時期に中国本を出しても、
売れないのは目に見えてるんだよねぇ」
と言われてしまいました。
本来、中国ビジネスは、流行りすたりで
語られるような問題ではないんですけどねぇ...。

これだけ日中関係が悪化している状況下で、
それでも引き続き中国に興味を持って、
この「中国ビジネスのススメ」を
お読み頂いている読者のみなさんは、
ぶれない軸と、先見の明を持った、
本当にすばらしい方々だと思います。

こんな時期を耐え忍んで乗り越えようとしている
みなさんの中国ビジネスが、
将来、大きな花を咲かせることを、
心よりお祈りしております。


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2006年4月24日(月)

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