第570回
日中の契約概念の違い

今回のワールドカップチケット騒動は、
私から見れば、日中の相互理解の不足に
起因するトラブルの典型的なパターンです。

はしごをはずした形になっている
「中国国際体育旅遊公司」の総経理は、
「今年初めに契約を交わしたが、
チケット価格が高くなったので、
ドイツから入手できなかった。
チケット予約金8,000万円は、
既にマックスエアサービスに返却した」
と言っているそうです。
コメントを見る限り、
すまなそうな様子はありません。

両社で交わされた契約が
どういう条件だったのかはわかりませんが、
中国側とすれば「これは不可抗力だし、
チケット予約金はきちんと返したのだから
文句はないだろう」ということなのでしょう。

中国側は最初からだますつもりはなく、
契約した時点では、何らかの形で
チケットを入手する目算があったのだと思われます。
しかし、一生懸命、チケットを入手しようとしたが、
予想以上に値段が上がり、それができなくなった。
これは自分たちではコントロールのできないことなので、
「没弁法(めいばんふぁー、仕方ない)」である、
ということです。

そこに「日本側をだましてやろう」
という悪意はないのですが、
「契約は一度結んだら必ず守るものだ」と考える日本側は、
チケットが入手できることを前提に、
予約客を集めてしまっていますので、
チケットが来なければ、結果的に、
「だまされた」となってしまいます。

私も過去、何度こんな目にあったか...。

中国では、契約書は
その時点での合意事項を書面にしたものであって、
状況が変われば当然条件も変わるのです。

今後、日本と中国の経済関係が
更に密接になるに従って、
今まで中国ビジネスを経験したことのない日本人が、
中国企業との取引を始めることになります。

中国企業は急速にまともになり、
契約に対する概念も西側先進国と
同様になりつつあるとはいえ、
まだまだ今回の中国側の会社のように、
日本側の常識で見れば、の話ですが、
契約を守らない非常識な会社が
たくさんあるのも事実です。

そういう会社と取引をする際には、
同じ契約書を見ても、
捉え方が違うかもしれない、ということを、
十分に理解して取引をする必要があると思われます。


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2006年6月14日(水)

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