第584回
漢字を書けない中国人

最近、私、急速に
漢字を書けなくなりつつあります。

文章を書く機会は、
このコラムのおかげもあって、
以前に比べて格段に多くなっているのですが、
それらは全て、実際に「書く」のではなくて、
パソコンで「打つ」になっています。
漢字も自分で「書く」のではなく、
パソコンが示してくれた候補から
「選ぶ」になっています。

このため、たまに文章を
本当に「書く」ことになると、
自分でも信じられないぐらい漢字が思い出せず、
その都度、辞書で調べたり、
ひらがなでお茶を濁したりしています。

これは中国でも同様のようです。
中国でもパソコンや
携帯電話のショートメールの普及により、
若い世代を中心に、
漢字を書けない人が増えているようです。

上海の高校で
国語(中国語)を教えている男性教師は、
アメリカに留学中の自分の娘からもらった
手書きの手紙を見て、愕然としたそうです。
1,000文字足らずの手紙に、
数十ヶ所の誤字があったのです。
お父さん、国語教師としてのメンツ、
丸つぶれです。

この娘、普段の文章作成は
全てパソコンを使っており、
今回、父親に手紙を書くために、
わざわざペンを買ったのだそうです。
彼女の日常生活において、
いかに文字を実際に「書く」機会がないかが、
よくわかります。

最近では、中国語のワープロソフトの性能も
どんどんよくなっており、
かなりいいかげんな入力をしても、
ソフトが気を利かせて「これですか?」と
候補を出してくれるところまで来ています。
このため、中国では、パソコンから離れると、
全く文章を書けなくなってしまう人が
増えているそうです。

漢字を書けない中国人。

パソコンの普及により、
人類の文章作成作業が飛躍的に効率化されたのは、
まぎれもない事実です。
しかし、今まで文章作成作業を担っていた人類の脳は、
退化の一途をたどってしまっているようです。


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2006年7月17日(月)

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