第583回
石炭からガソリンを作る

中国には石炭はいくらでもありますが、
石油は総需要量の半分近くを輸入に頼っています。
中国では今後、自動車が更に増加して、
石油の需要量が更に増大することが
予想されていますが、一方で、
エネルギーの安全保障という面から見た場合、
国内の石炭資源を有効活用すべき、
という意見も出てきています。

そんな中、今、中国では、
石炭の液化が注目されています。

先日、中国の石炭最大手・
神華集団(神華能源の親会社)は、
南アフリカのエネルギー企業・サソールと、
陕西省、寧夏回族自治区での
石炭液化プラント建設に関する
事業化調査をすることで合意しました。
プラント1基の生産能力は日産8万バレルで、
建設コストは50億米ドル。
早ければ2012年には操業を開始する、
とのことです。

また、山東省の
兖砿集団(ヤン州煤業の親会社)は、
石炭液化技術を独自で開発し、
自社鉱区に年産100万トン規模の工場を
建設する計画であることを発表しました。
現在、当局の許可待ちで、
順調なら2年後に生産を始める、
とのことです。

両社とも、原油価格が
1バレル=30米ドル以上なら採算が取れる、
としていますので、
現在の原油価格の水準が続けば、
全く問題なく事業化できるどころか、
大儲け、ということになります。

このほかにも、
石炭を直接液化してガソリンを作るのではなく、
液化技術を利用して石炭から
メタノールやジエチルメーテル(DME)を合成し、
これを量産する試みが、山西省の交城県や
内モンゴル自治区のオルドス市で行われています。
これらのアルコール系燃料は、
ガソリンや軽油に混入して使用することにより、
より少ない石油系燃料で
自動車を走らせることを可能にするそうです。

石炭で走る車を作るのではなくて、
石炭から作った液体燃料で既存の車を走らせる。

この技術が実用化されれば、
中国は国内の豊富な石炭資源を有効活用し、
エネルギーの海外依存比率を、
一気に下げることができるかもしれません。

となると、中国株の人気銘柄は、
中国石油天然気(0857)や中国石油化工(0386)から、
神華能源(1088)やヤン州煤業(1171)に移る、
なんてことも起こるのでしょうか。


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2006年7月14日(金)

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