第591回
「自分株式会社」の社長

中国のサラリーマンには、
自分は「自分株式会社」の社長で、
会社に仕事を斡旋してもらっているかわりに、
自分が儲けた利益の一部を会社に支払っている、
という意識の人が多いように思います。

彼らは最初から
「自分株式会社」の社長ですので、
会社を辞めて本当に独立起業することについても、
それほど抵抗がないようです。
こうしたことも、中国の起業率を上げている
一つの要因なのかもしれません。

これに対して、日本のサラリーマンには、
最近、ずいぶん減ってきたとは言え、
まだまだ「会社=自分」と考える人が
多いように思います。

かく言う私も、「会社=自分」と考える
日本人サラリーマンの一人でしたので、
起業後、「丸紅の柳田」の「丸紅の」が取れて、
誰からも相手にしてもらえなくなったときには、
アイデンティティの喪失により、
非常に大きな精神的ダメージを受けました。

これが中国のサラリーマンのように、
最初から「自分株式会社」の社長、
という意識で仕事をしていれば、
こんなに落ち込むことも
なかったのかもしれません。

「全ては会社の利益のため」と考えて
モーレツに働く忠実な社員のおかげで、
日本企業がめざましい成長を遂げてきたのは
まぎれもない事実です。
しかし、その反面、一歩会社の外に出ると
すぐに死んでしまう、
無菌培養のサラリーマンを
大量に育ててしまったこともまた事実です。

日本企業は、成長を続けているときには、
忠実な社員をありがたがって雇っていたのですが、
平成不況で成長が止まり、余剰人員が出てくると、
モーレツなリストラを始めました。
そして、その過程で、
正社員は一度雇ってしまうと、業績が落ち込んでも、
簡単に解雇できないことがわかり、
契約期間が終われば再契約をしなければ済む
契約社員を多用するようになってきました。

今後、日本の景気がいくらよくなっても、
雇用多様化の流れはもう後戻りしません。

そんな中、今後、
日本のサラリーマンが生き残っていくためには、
中国のサラリーマンを見習って、
「自分株式会社」の社長、という意識で仕事をし、
いざとなれば会社の外に出ても生きていける生命力を
身に付ける必要があるのではないでしょうか。


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2006年8月2日(水)

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