第593回
余命2-3年と言われたらどうします?

中国ではこれまでに、
腎臓74,000件、肝臓10,000件など、
合計で85,000件以上の臓器移植が行われ、
アメリカに次ぐ「臓器移植大国」に
なっているそうです。

中国はドナー(臓器提供者)の数が多く、
臓器移植の費用も
アメリカなどに比べるとはるかに安いため、
日本を始め、欧米諸国、韓国、インド、中東など
世界各国から患者が続々と渡航、
2005年の中国の臓器移植件数は、
12,000件以上と過去最高を記録したそうです。

しかし、移植件数の急増とともに、
臓器を高値で売買するブローカーや、
患者の足元を見て臓器移植手術の値段をつり上げる
悪徳病院などが現れ始めました。
このため、中国衛生部は今年4月前後の1-2ヶ月間、
国内各病院の外国人に対する臓器移植手術を禁止、
その間に臓器移植に関する管理体制を整備し、
6月から手術再開の許可を出しました。

新たな体制では、
臓器移植手術をすることができる病院を指定、
指定病院の中には倫理委員会の設置を求めました。
また、臓器の売買は厳禁とし、
死刑囚の臓器使用も、本人又は家族の同意の下で、
という原則を徹底することになりました。

外国人に対する臓器移植手術再開後、
大連市内の病院で肺の移植手術を受けた
日本在住の54歳の男性は、
2003年8月に重い肺炎を発病、
余命は2-3年と言われていたそうです。
助かるためには、移植手術を受けるしかないのですが、
日本国内では12,000人以上の臓器移植希望者が
ドナーが現れるのを待っている状態、
10年待ってもドナーが現れる保証はありません。

このため男性は、今年5月中旬に大連に渡って、
ドナーの出現を待ったところ、
40日目に肺を提供してくれる
死刑囚が現れたのだそうです。

中国の病院の衛生状態や、
移植技術には不安が残りますし、
実際に、手術に失敗して患者さんが
亡くなってしまった例も報告されています。
しかし、余命2-3年と言われたら、
私も迷わず中国で移植手術を受けると思います。

座して死を待つぐらいなら、
多少のリスクはあっても、
少しでも長く生きられる
可能性があるほうに賭ける。

中国はそんな日本の患者さんを、
絶望の淵から救ってくれる、
ラストリゾート(最後の切り札)に
なっているのです。


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2006年8月7日(月)

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