第601回
「正しいことを言う人」の見分け方

中国で人に道を訊くときには、
正しいことを言う人にだけ道を訊くべきですし、
中国の人たちと取引をするときには、
正しいことを言う人とだけ契約を結ぶべきです。

では、「正しいことを言う人なのかどうか」は
どうやって見分けるのか。
これは難しい問題です。

今から思い返してみれば、
私が河南省で道に迷ったときの敗因は、
運転手さんが十字路や分かれ道に来ると車をとめて、
そのとき一番近くにいた人に道を訊いていたことです。

たまたま、一番近くにいた人が、
鄭州に行く道を知っていればよいのですが、
どう考えてもその村から
一歩も出たことがないと思われる農民や、
なんにもやることがなくて日がな一日、
そこに座っているような人にも道を訊くので、
違う方向を指差されてしまったのです。

ガソリンスタンドや政府の建物などがあるうちに、
車をとめて正しい道を訊いておけば、
農道に迷い込んで、同じところを
ぐるぐる回るはめにも陥らなかったのです。

道を訊くのが一発勝負であるのに対して、
中国企業との取引の場合は、
いろいろと判断材料を集めることが可能です。
社長と面談したり、企業信用調査をしたり、
業界での評判や過去の実績などの周辺情報を集めたり。
しかし、そうして集めたデータの結果がよくても、
その企業が信用できるとは限りません。

特に国有企業の場合、いくら業績が良くても、
担当者が無能だととんでもない目に遭わされますし、
大手だと思って安心していると、
平気で知らぬ存ぜぬを決め込んだり、
逃げたりします。
契約違反があった場合は、
裁判に訴えればよい、という人もいますが、
中国では裁判に訴えることぐらい、
カネと時間が無駄に費やされることはありません。

そういった意味では、大手国有企業よりも、
老板(らおばん、オーナー経営者)が
しっかりしている零細私営企業の方が、
取引先としては優良なのかもしれません。

こう言ったら身の蓋もないですが、
最終的には、実際にお付き合いを始めてみないと、
「正しいことを言う人」が誰なのかはわかりません。

ワールドカップのチケットを仕入れられなかった、
マックスエアサービスのように、
一発勝負の場合は仕方がありませんが、
長い時間をかけることが許されるならば、
まずは、「これは!」と思った企業と
小さな取引を始めてみて、
先方のパフォーマンスを見ながら取引を拡大していく、
というのが、オーソドックスですが、
最も安全な方法なのではないでしょうか。


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2006年8月25日(金)

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