第614回
年収15億円の炭鉱老板

山西省は中国一の石炭の産地です。
これは、省都・太原市に、
「煤炭大厦(めいたんだーしゃー、石炭ビル)」
という名前の、大きくて立派なビルが
立っていることからもわかります。
石炭の生産が、省の経済を支えているのです。

山西省では大規模炭鉱は国有ですが、
小規模炭鉱には個人が所有するものも
まだまだ数多くあります。
しかし、小規模炭鉱といってもバカにはできません。
今回、山西省に出張して聞いた話では、
ここ数年の石炭価格の高騰により、
一般的な小規模炭鉱の
老板(らおばん、オーナー経営者)の年収は
1億元(15億円)を軽く超えているそうです。

そして、こうした「オイルマネー」ならぬ、
「コールマネー」を狙って、
太原の新聞には、連日のように、
北京の不動産や高級車のハデな広告が
掲載されているそうです。

山西省の炭鉱老板たちは、
1日分の収入で買えてしまうような
太原の安っぽいマンションには既に興味はなく、
価格は太原の3-4倍はするけれど、
今後オリンピックを控えて
更なる値上がりが期待できる
北京の高級マンションにご執心のようです。

こうした老板たちが投機目的でまとめ買いをするため、
北京のマンションはいくら作っても買い手が付きますし、
汚く使われて資産価値が落ちてしまうのを怖れて
人に貸さない人が多いため、
北京の郊外にはできあがって何年も経つのに、
人がほとんど住んでいない、
ゴーストタウンのようなマンション群が
いくつもあるのです。

飛ぶ鳥を落とす勢いの炭鉱老板ですが、
世の中、そう良いことばかりではありません。

現在、中国では小規模炭鉱による死亡事故、
環境破壊、資源の浪費が深刻な問題となっています。
小規模炭鉱は老板が利益を追求するあまり、
安全設備や環境設備を買わなかったり、
採炭条件の良いところだけを採炭して、
そのまわりの石炭資源を二度と採掘できない状態に
してしまったりするのです。

このため、中国政府は全国的に小規模炭鉱を閉鎖し、
石炭の生産は安全、環境、資源の有効利用への対策が万全な
大規模炭鉱に集約する、という政策を推し進めています。

こうなると困るのは小規模炭鉱の炭鉱老板たちです。
自分の所有する炭鉱が強制的に閉鎖されてしまえば、
毎日30万元(450万円)づつ入ってきている収入が、
ゼロになってしまうのです。


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2006年9月25日(月)

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