第613回
ハード一流、ソフト三流

先日、出張で久しぶりに山西省に行ってきました。

山西省は中国一の石炭の産地です。
このため、私が丸紅の北京支店で
石炭の仕事をしていた時は、
毎月のように出張で行っていたのですが、
起業して石炭と縁がなくなってからは、
ほとんど行く機会がなくなってしまいました。

北京から山西省の省都・太原(たいゆぇん)までは、
飛行機で1時間。
久しぶりの太原は、道路が整備されていたり、
郊外にマンション群ができていたり、
ウォルマートやマクドナルドができていたりと、
めざましい発展を遂げていました。

ホテルは5つ星のところができ、
レストランも豪華な内装のお店が
たくさんあるのですが、
その化けの皮は太原に着いて
1時間もしないうちに剥がれました。
サービスのレベルが、
設備の進化に追いついていないのです。

太原に着いてから、夕食を食べるために、
非常に豪華な内装のレストランに入ったのですが、
入り口に立っている接待員は、
こちらを見ることもなく、無表情のまま大声で
「歓迎光臨(ほぁんいんぐぁんりん、
いらっしゃいませ)」と言うだけ。
「マネージャーが言えっていうから言ってるだけであって、
別にあんたを歓迎してるわけじゃないのよ」という、
「言わされ感」丸出しの態度です。

そして、店内に入って注文をしようとすると、
マネージャーが寄ってきて、アワビやフカヒレなど、
値が張るものばかり薦めてきます。
「客の都合なんか知らないわ。
なにしろ高いもん注文させて、あたしの成績上げなきゃ」
と言わんばかりです。

更に、そうしたお薦めを無視して、
自分の食べたいものを頼もうとすると、
「それは無い」とか、「今日はできない」とか
そんなのばっかり。
無いんだったら最初っからメニューに載せるな!
と言いたくなります。

きれいな内装のレストランを作るなら、
数ヶ月あればできますが、
サービス精神の無い人に
「良いサービスとは何か」ということを教えるには、
何年にもわたる教育が必要です。

ハード一流、ソフト三流。

高度経済成長を続ける中国では、
続々と立派な建物が建設されていますが、
成長が早すぎて、その立派な建物に見合った
すばらしいサービスを提供する人を
育てるのが間に合っていないように思います。

今後は、立派なハードに見合うように、
ソフトのレベルを上げていくことが、
中国の課題となるのではないでしょうか。


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2006年9月22日(金)

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