第629回
世界の「ヒール」としての北朝鮮

10月9日に北朝鮮が核実験を強行して以降、
中国、アメリカ、日本の3国は、
実にすばらしい連携プレーを見せています。

まず、核実験の直後に中国の李肇星外相が
アメリカのライス国務長官、日本の麻生外相と
電話で今後の対応について協議。
そして12日には、中国の唐家セン国務委員が
胡錦涛国家主席の特使としてアメリカを訪問、
ライス国務長官と会談し対応を協議。

18日には唐家セン国務委員が
2度目の核実験を思い止まらせることと、
6カ国協議への早期復帰を促すことを目的に、
北朝鮮を訪問し金正日総書記と会談。
この中国の説得工作に対して、
アメリカと日本は「期待してるよ!」と
エールを送りました。

そして、20日には今度はアメリカのライス国務長官が
中国を訪問し、説得工作の結果を聞くと同時に、
今後の対応策について協議をしました。

今まであんなに仲が悪かった国同士とは思えません。
北朝鮮という誰もがその行動を批判する
「ヒール(悪役)」が出現したことにより、
その他の国がいがみあいをやめ、
一致団結してことに当たっているのです。

突然ですが、うちの3人の娘は普段は
ささいなことでケンカばかりしています。
しかし、母親が風邪でダウンする、
なんていう非常事態に陥ると、
長女は料理を作り、次女は買物に出かけ、
三女は母親の看病をする、という具合に、
3人で協力して実によく働くようになります。
この緊急事態にのんきな例えで申し訳ないのですが、
今の中国、アメリカ、日本の状態も、
そんな感じなのではないでしょうか。

また、今回驚いたのはは、
朝鮮戦争以来の中国と北朝鮮の「血の結束」が、
意外にもろいものだった、ということです。

北京の北朝鮮大使館は一番良い場所にあるし、
北朝鮮の人たちが北京にある外国の施設に
駆け込もうとすると捕まえて強制送還するし、
北京から平壌へは飛行機や鉄道で気軽に行けるし。
こんな状況から、中国は何があっても
北朝鮮の味方をするのかと思っていたのですが、
今回、中国は北朝鮮に対し
「核実験はやめなさい、と言ったのに無視した!
メンツを潰された!」と怒り、
北朝鮮は中国に対し「中国の保護など必要ない!
わが国は中国の属国ではない!」と反抗しました。

今回のことで、国と国との関係というのは、
絶対的なものではなく、双方が案件毎に国益を考慮して、
利害が一致する国と行動を共にするものだ、
ということがよーくわかりました。


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2006年10月30日(月)

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