第635回
環境に良いことをすればするほど儲かる仕組み

日本ではペットボトルは
資源ゴミとして分別して捨てられています。
しかし、輸送費用や処理費用が高いため、
逆有償、すなわち、おカネを払って引き取ってもらう、
という形になっているそうです。

これが最近は、中国がペットボトルを大量に買うようになり、
今まで逆有償だったペットボトルに値段が付き始めたため、
経営難に陥っている日本のリサイクル業者も多いと聞きます。

資源を有効活用するために資源ゴミをリサイクルする、
というのは、すばらしい考え方ではありますが、
逆有償ではどう考えても「仕組み」に無理があります。
リサイクル産業、というのは、日本のような
人件費の高い国では成り立たないのかもしれません。

「仕組み」に無理があるのは、
ペットボトルだけではありません。

例えば電気モーターと
ガソリンエンジンを併用するハイブリッドカー。
普通のガソリンエンジンの車より何十万円も高くては、
「高いおカネを払っても、
地球環境保全のためになることをする」
という志の高い人にしか普及しません。

当社が日本に輸出している活性炭もそうです。
「環境意識の高まりから、今後、
活性炭の需要は爆発的に伸びていく」
と言われ続けてはや十数年。
日本の活性炭消費量は一向に増えません。
活性炭の購入はユーザーにとっては
コスト増加要因以外のなにものでもありませんので、
各社とも環境規制をクリアできる
ギリギリのことしかしないのです。

私が子供の頃、住宅地には
「チリ紙交換」のトラックがやってきて、
集めておいた「古新聞、古雑誌、ぼろきれ」を持っていくと、
チリ紙と交換してくれました。
あの頃の日本は、今の中国と同じで、
資源の値段より人件費の方が安かったため、
そんなことが可能だったのでしょう。

しかし、その後日本の人件費はどんどん上がり、
資源ゴミを回収して再利用するより、
新品を作る方がコストが安くなってしまいました。
日本政府も補助金を出したりして、
資源のリサイクルを促進しようとしていますが、
補助金にも限度があります。

「環境に良いことをすればするほど
儲かる仕組み」をいかにして作るかが、
今後、環境保全や資源リサイクルの
キーワードになっていくのではないか。
中国の観光地でペットボトルを待つ子供たちを見て、
そう思いました。


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2006年11月13日(月)

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