第639回
「人治国家」から「法治国家」へ脱皮するには...

中国で働く人とその家族は、
毎年、公安局で労働ビザに当たる
居留許可証の更新をしなくてはいけません。

私は毎年、家族5人分の居留許可を
一緒に申請しているのですが、
以前、例年のように一緒に申請しようとしたときに、
三女の居留許可証の有効期限が
既に切れていたことに気付きました。
前年に居留許可証を取得したときに、
パスポートの有効期限が足らず、
三女の居留許可証の有効期限だけが
約1カ月短くなっていたことを忘れていたのです。

私は急いで日本大使館領事部で
三女のパスポート更新手続をし、
外国人の居留許可を管轄する
公安局に出向いて事情を説明しました。
公安局の担当者の回答は
「不法滞在の罪により、罰金1日500元(7,500円)、
35日で合計17,500元(262,500円)」というものでした。

うっかりしていた私が悪いとは言え、
罰金26万円と言われて、私は愕然としてしまいました。
ちょっと忘れてただけで26万円...。

困った私はパートナーの劉さんに相談しました。
劉さんは公安局の知り合いのつてをたどって、
いろいろと交渉をしてくれ、その結果、
罰金は最終的に最初に提示された金額の1/3以下、
5,000元(75,000円)まで下がりました。

日本では、お役所から課された罰金は、
言われた値段をそのまま払うのが普通ですが、
中国では役所の罰金は交渉次第で
下がることもあるようです。
これは居留許可証だけの話ではなく、
ビジネス関係の許認可でも同じです。
中国ではそれだけお役人の権限が大きいのです。

中国では現在、法律がどんどん整備され、
一見、「人治国家」から「法治国家」への
脱皮を図っているかのように見えます。
しかし、その法律の解釈や運用をするのは
現場にいるお役人ですので、
いくらたくさん法律ができても、
お役人が黒と言えば黒に、白と言えば白になります。

これだけお役人の権限が大きいと、
彼らを味方に付けるか、敵に回すかで、
その結果には天と地ほどの差が出てきます。
このため、中国の人たちは
お役所関係の人脈を非常に大切にしますし、
お役人に暴言を吐かれても絶対に逆らわないのです。

お役人の権限のおかげで、
罰金を1/3以下にしてもらった私の口からは、
大変言いにくいことではあるのですが、
彼らの権限を全て奪い取ってしまわない限り、
中国はいつまで経っても
「人治国家」から「法治国家」へ脱皮することは
できないのではないか、と思います。


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2006年11月22日(水)

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