第646回
紅白歌合戦の役割

日本の大晦日の夜の定番、と言えば、
NHKの紅白歌合戦です。
以前は80%前後を誇っていた
紅白歌合戦の視聴率も、
ここ数年は最盛期の半分、
40%前後まで落ち込んでいるそうです。

NHKも視聴率を上げるために、
昨年は改革、今年は原点復帰と
いろいろと苦悩しているようですが、
他のメディアや他の娯楽が
いくらでもある現在の日本では、
すでに紅白歌合戦の役割は
終わってしまったのかもしれません。

しかし、海外に住む日本人には、
紅白歌合戦を楽しみにしている人は
たくさんいるのではないかと思います。

かく言う私も、中国で起業後、
おカネがなくて日本のテレビが受信できる
外国人用アパートメントに住むことができず、
大晦日、妻と3人の娘に泣きつかれ、
ただでさえ資金の流失が激しいなか、
断腸の思いで家の近くのホテルに部屋を取って、
家族5人で紅白歌合戦を見た口ですので、
その後、事業がなんとか軌道に乗って、
外国人用アパートメントに住むことができるようになっても、
毎年大晦日の晩には、家族揃ってありがたく
紅白歌合戦を視聴させて頂いています。

たぶん、私がずっと日本に住んでいたら、
紅白歌合戦など見ないと思うのですが、
「日本のテレビを見る」という
ごく普通のことが難しいここ中国では、
大晦日に紅白歌合戦を見られる、ということ自体、
とてもありがたいことなのです。

こう考えていくと、
紅白歌合戦が80%前後の視聴率を誇っていた時代の日本では、
大晦日に家族揃って紅白歌合戦を見られる、ということが、
非常にありがたいことだったのではないかと思います。
「今年もなんとか無事に年を越せる」という
安堵の気持ちの象徴が
紅白歌合戦だったのではないでしょうか。

その後、日本は豊かになり、
「フリーター」や「ニート」はもちろん、
「ホームレス」でも飢え死にしない世の中になりました。
紅白歌合戦の視聴率が低下しているのは、
内容うんぬん、というよりは、
昔、貧乏だった頃にありがたかったことが
豊かになった今となっては、
ありがたくもなんともなくなっている、
ということなのではないでしょうか。


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2006年12月8日(金)

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