第667回
従業員の不正を防ぐためには

中国は「わいろ」王国です。
ニュースでは共産党幹部の贈収賄事件が
大々的に報道されたりしていますが、
当然、日常の小さな取引の中でも
贈収賄は日常茶飯事です。

業界によっては既に常態化してしまっており、
もらう方も渡す方も、ほとんど罪の意識なく、
さも当たり前のように贈ったり贈られたりするのが、
中国の「わいろ」なのです。

北京に事務所を持つある日本企業の
駐在員の方から聞いたのですが、
以前、同社のスタッフが、船会社から
バックマージンを受け取っていたことが発覚したため、
解雇したことがあったそうです。

そのスタッフは、船をチャーターする際に、
船会社の社員と結託して
市況より若干高めの海上運賃で発注し、
その差額の一部をバックマージンとして船会社から受け取り、
個人的に着服していました。
市況よりトン当たりほんの2-3ドル高く決めても、
5,000トンの船なら10,000-15,000ドル、
その半分をもらっていたとしたら5,000-7,500ドルですから、
一回の用船契約で、彼の給料の1年〜1年半分に相当する
「わいろ」が懐に入ることになります。

「これを10回やれば10-15年は遊んで暮らせる」と思うと、
やはり、目がくらんでしまうのでしょうか。

この不正、どうしてバレたか、というと、
彼がカゼをひいて会社を休んだときに、
船をチャーターする必要が出てきたため、
他のスタッフが船会社から海上運賃の見積もりを取ったところ、
いつもよりずいぶん安かったのだそうです。
そして、「どうも怪しい」ということで、
いろいろ調べたところ、彼がその船会社に対して、
市況より高く発注していたことが明るみに出たのです。

「わいろ」を受け取る人は、
いつ何が起こるかわかりませんので、
健康管理には気をつけなければいけません。

日本でも従業員の不正はあると思いますが、
従業員の会社への帰属意識が薄い中国の不正の数は
日本の比ではないと思います。
そんな状況下で従業員の不正を防ぐには、
やはり日々のチェックと、
発注権限の分散が必要です。

ただ、ここは「上に政策あれば、下に対策あり」の国、
いくらチェックを厳しくしても、
監視の目をかいくぐって不正を行う輩が
いないとも限りません。

不正を本人の内面から防止するためには、
10年、15年先の明確なキャリアパスを見せてあげて、
「はした金のために、このキャリアパスを
棒に振ったらもったいない」と思ってもらうことが、
一番の防止策なのかもしれません。


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2007年1月26日(金)

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