第716回
非共産党員の閣僚就任が意味するもの

中国で1972年以来35年ぶりに
非共産党員の閣僚が誕生しました。
その閣僚とは「中国致公党」の中央副主席で、
上海の同済大学学長であった万鋼氏54歳。
今回、科学技術大臣に任命されました。

日本に住んでいる方々は、
中国の政党は執政党である「中国共産党」だけしかない
と思われているかもしれませんが、
「一応」中国にも「中国共産党」以外に
民主諸党派と呼ばれる8つの政党があります。

その8つの政党とは万鋼氏の「中国致公党」のほかに、
「中国国民党革命委員会」、「中国民主同盟」、
「中国民主建国会」、「中国民主促進会」、
「中国農工民主党」、「九三学社」、「台湾民主同盟」
があります。

「中国共産党」が農民と労働者階級の
利益の代表であるのに対し、
これらの政党は学者、専門家、知識人や、
旧国民党員、台湾省籍の人たち、帰国華僑などの
利益を代表しており、
全国人民代表会議と全国政治協商会議を通じて、
国政に参加できるようになっています。

「一応」としたのは、これらの政党が
日本の野党のように執政党を攻撃する存在ではなく、
「中国共産党」と協力関係にある、いわゆる企業内の
「御用組合」のようなものであるためですが、
これら8政党の成立は全て1949年の建国以前ですので、
「中国共産党」が民主国家を偽装するために
勝手に作った政党ではないようです。

今回の非共産党員の閣僚就任は、
35年ぶりということもあって、
新聞などでも大きく報道されましたが、
これによって中国共産党の一党独裁体制に
劇的な変化が起こるとは考えにくいです。

ただ、「中国共産党」からだけではなく、
様々な層から多様な人材を登用しよう、
という中国政府の意気込みは感じられます。

中国に民主化を強く迫るアメリカからしてみれば、
「全国民による投票が行われなければ、
民主主義国家とは言えない」ということなのでしょうが、
中国政府は今後、こんな感じでゆっくりとゆっくりと、
西側先進諸国のコピーではない、
中国の国情に合った独自の民主化の道を
模索していくものと思われます。


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2007年5月21日(月)

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