第720回
危ない「にわか投資家」

中国で股民(ぐーみん)と呼ばれる
個人株式投資家が急増しています。

中国国内の株式決済口座は
今年4月だけで670万口座増加、
4月末の時点で9,400万口座になったとのことです。
これは、最近の株価上昇に「乗り遅れまい!」と考えて
株式投資を始める個人が急増しているためです。

この勢いでいくと、この5月末に株式決済口座が
1億口座を超えるのはほぼ確実です。
中国は日本の総人口に匹敵する株式投資家を擁する、
「投資家大国」になりつつあるのです。

しかし、株価の上昇を見て参入してきた
「にわか投資家」の中には、
株式投資の基礎知識を
ほとんど持っていない人も多いようです。

中国における株式投資は、数年前までは
「炒股(ちゃおぐー、株を炒める)」とか、
「玩股(わんぐー、株で遊ぶ)」などと呼ばれ、
ギャンブルの一種と捉えられてきました。
私の中国人の友人の中には
「宝くじは全然当たらないから、
今度から株を買うことにしたよ」
と真顔で言う人もいました。

しかし、最近増加している
「にわか投資家」が危ないと思うのは、
彼らは株式投資を宝くじの代わりではなく、
定期預金の代わりだと考えていることです。

宝くじの代わりだと思えば、
万一、株価が暴落して、株券が紙くず同然になっても
生活には支障をきたさない、
という程度のおカネしか投資しませんが、
定期預金の代わりだと思うと、
全財産を突っ込む人も出てきます。

株式市場関係者によれば、
実際、退職金や、
定期預金、生命保険を解約したおカネで
株式に投資する人もけっこういるようです。
今は株価が上がっていますので問題は表面化しませんが、
株価が下がれば生活資金に困る人が出てくるのは必至です。

こうした事態を憂慮した中国証券監督管理委員会は
「市場の活況に伴い、リスク意識に乏しく、
リスクを負担する能力のない投資家が
株式市場に新規に参入してきている」と指摘、
証券取引所、証券業界関係者に対し、
株式投資のリスク教育、情報公開、
取引監督の強化を要求する通知を出しました。

バブルの様相を呈してきた最近の中国株式市場。
中国が、多くの破産者や自殺者を出した
日本のバブル崩壊の轍を踏まないことを祈るばかりです。


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2007年5月30日(水)

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