第726回
ゲテモノの法則

中国の人たちはありとあらゆるものを食べます。
特に、広東省の人は「食は広州にあり」
と言われるだけあって、
「四足のものはテーブル以外、
空を飛ぶものは飛行機以外なんでも食べる」
などと言われています。

そうした食への好奇心が高じて食べたハクビシンから、
中国全土にSARSが蔓延したのは記憶に新しいところです。

私はおいしいものは好きですが、
食に対する好奇心はそこまで旺盛ではありませんので、
普通の豚肉や鶏肉を食べていれば十分幸せです。
しかし、中国各地に出張すると、
私たち日本人の価値観からすれば
ゲテモノの範疇に入る食べ物で
接待を受けることがしばしばあります。

私はこれを「歓迎の度合いが強ければ強いほど
ゲテモノが出てくるの法則」と呼んでいます。

出張先の中国企業の人たちは
「めったに来ない外国人が来る」ということで、
宴会の準備に気合が入ります。
そして「せっかく遠くから来てくれるのに、
普通の豚肉料理や鶏肉料理なんか出しては失礼だ」
ということになり、いろいろと考えた挙句、
普段はめったに食べられない
ゲテモノが出てくることになるのです。

彼らの気持ちは心からありがたいと思うのですが、
いざゲテモノを目の前にするとやはり腰が引けてしまいます。

今まで一番ショッキングだったのは、
山東省の南部・滕州市に行ったときに出てきた
「羊の脳みそがたくさん浮かんだ鍋」と
「羊の目ん玉がたくさん浮かんだ鍋」と
「羊の男性器がたくさん浮かんだ鍋」の三連発です。

何でもこれらは
「全羊宴(ちゅえんやんいぇん)」と言って、
羊の全ての部位を食べる
地元の名物料理なのだそうですが、
脳みそや目ん玉をおいしそうに
ガツガツと食べる中国企業の人たちを前に、
私は悪魔の館に迷い込んでしまったような
気分になったものです。

遠路はるばる来てくれた客人なのだから、
普段は食べられない珍しいものを出す。
その気持ちは本当にありがたいのですが、
気持ちだけ頂いて、
食事は普通の豚肉や鶏肉を食べさせてほしいです。


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2007年6月13日(水)

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