第735回
「21世紀の奴隷工場」事件

私は11年前に北京に赴任するときに、
先輩駐在員から
「中国は日本ほど治安がよくないので、
学校の登下校も含めて、
絶対に子供を1人で外に出してはいけない」
と言われました。

「誘拐されて売り飛ばされた子供は、
女の子は売春、男の子は強制労働をさせられる。
外国人の子供は普通より高く売れるらしいので、
特に気をつけた方がよい」とのことでした。

いくら中国でも、本当にそんな前近代的なことが
行われているのか半信半疑だったのですが、
最近の報道でそれが本当だったことがわかりました。

舞台は山西省の闇経営のレンガ工場。
河南省などで誘拐されて売り飛ばされた
1,000人以上の子供が、
これらの工場で過酷な労働を強制されていたのです。

子供の値段は1人400-500元(6,400-8,000円)。
一度買ってしまえば、
後はずっと死ぬまでタダで働かせることができますので、
闇工場にとっては安い買物です。

強制労働させられる少年の多くは朝5時に起床して、
深夜0時まで働かされます。
食事では肉類は与えられず、顔も洗えず、
逃亡を防止するために、
門外に猛犬を放つ工場もあるそうです。

河南省で誘拐された17歳の少年は、
冷却前の熱いレンガを無理矢理運ばされて大やけどを負い、
陝西省の少年は逃亡に失敗し、監視人に殴られ、
障害が残ったそうです。
また、ある工場では監視人に殴られて
動かなくなった労働者2人が埋められましたが、
埋められるときに2人はまだ息をしていた、
とのことです。

この「21世紀の奴隷工場」と名付けられた事件に対し、
胡錦涛国家主席を始めとする党指導部は強い衝撃を受け、
徹底的な救出と捜査を指示しました。
しかし、中国では2000-2005年の6年間で
4,911件の子供の誘拐事件が摘発されており、
未解決の事件はその数倍に上ると見られることから、
この事件はほんの氷山の一角に過ぎない
との見方も出ています。

一見、近代国家のようになりつつある中国ですが、
一部ではこんな中世の奴隷売買のようなことが
公然と行われています。
それを許しているのは、ヤル気のない中国の警察と、
闇工場からワイロをもらって目こぼししている
地方の党幹部です。

この国では自分の子供は、
自分で守らなければいけないのです。


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2007年7月4日(水)

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