第738回
温州商人の妻たち

中国のユダヤ人と称される温州商人。

元々、温州は山がちで農地が乏しく、
中央政府からは経済的に干され、
かと言って、最も近い大都市・上海に出ても、
学歴が低いため収入の高い職に就けない、
という虐げられた立場にありました。

しかし、彼らはその逆境にもめげず、
徹底的なマーケティングにより
売れる衣服や革製品のデザインを知り、
それを地元の安い労働力を使って徹底的に安く作る、
という方法で財を成しました。

財を成した後は、上海で不動産に投資したり、
山西省で炭鉱に投資したり、
北朝鮮でデパートを建設したり、
人口4,000万人のスペインに6,000万足の靴を売ったりと、
中国国内のみならず、
世界各地でその名をとどろかせてきました。

そんな億万長者の温州商人の奥様たちは、
さぞかし優雅で幸せな暮らしを
しているのだろうと思いきや、
いくらお金持ちになっても
彼女たちの悩みが尽きることはないようです。

先日、温州商人を始めとする
浙江省の民間企業経営者の妻たちが
「浙商夫人倶楽部」なる会を設立したそうです。

温州商人は中国各地だけでなく、
世界を股にかけて商売をしているので、
家を留守にすることが多く、
残された妻は孤独感を味わったり、
複雑な人間関係に悩んだりするのだそうです。
また、温州商人はモーレツに働くため、
中には若くして体を壊したり、
死んだりする人もいるため、
そうしたことも妻たちの
悩みのタネになっているようです。

このため「浙商夫人倶楽部」では、
共通の悩みを持つ温州商人の妻たちが相互交流をしたり、
旦那の健康管理をするための
セミナーを開いたりするのだそうです。

私たちの人生の目的は幸せになることです。
私たちはお金持ちになれば幸せになれると信じて、
おカネを稼ぐために日々働いたり、
投資をしたりしているのですが、
億万長者の温州商人の妻たちが
それほど幸せそうではないのを見ると、
持っているおカネの多寡と幸せの度合いは
必ずしも比例しないような気がしてきます。

そう思って、一瞬、
温州商人の妻たちに同情してしまったのですが、
「浙商夫人倶楽部」の活動内容に
「生活費以外に月10万元(160万円)以上あるお小遣いを
もっと増やすために資産運用顧問会社と提携」
というのがあるのを見て、
「やはり一切同情する必要なし!」
と思い直しました。


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2007年7月11日(水)

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