第744回
あこがれの大家生活

投資した不動産からの家賃収入だけで生活できたら、
もう働く必要もないし、どんなにいいだろう。
「金持ち父さん、貧乏父さん」のロバートキヨサキが推奨し、
みんながあこがれる大家生活ですが、
ここ北京ではちょっと事情が違うようです。

北京の不動産マーケットの問題は、
マンションを買う人は多いのに、
借りる人は少ない、ということです。

北京の人たちは、「持ち家派」の人の方が、
「賃貸派」の人より圧倒的に多いです。
日本では「持ち家派」と「賃貸派」の戦いは、
「両者に損得の差はない」ということで、
既に決着を見ているのですが、
北京ではいまだに
「家を借りて毎月家賃を払っても
いつまで経っても何も残らないが、
家をローンで買って毎月返済すれば
最後に家という資産が残るから、
家は借りるより買ったほうか得」
と考える人がほとんどです。

このため、日本人向けのアパートメントに
部屋を借りて住んでいる私は、
中国人の友人と家の話をすると必ず、
「これからもずっと北京に住むつもりなら、
なんで家を買わないんだ。もったいない」
と言われます。

こんな感じですので、北京でマンションを借りるのは、
北京に一時的に住み、ゆくゆくは祖国へ帰る
外国企業の駐在員ぐらい、ということになります。

借りる人が少ないので、
北京のマンションの家賃相場はあまり上がりません。
家賃の相場が上がらなければ、
普通はマンションの販売価格も上がらないのですが、
北京のマンションの販売価格はどんどん上がっています。

これは、値上がり期待でマンションを買う人が
たくさんいるためです。
このため、デベロッパーがかなりの高値で
新築マンションの値段を設定しても、
完工前に完売できてしまうのです。

こうしたことから、
北京の新築マンションに投資した場合の
家賃収入の利回りは、どんどん悪くなっています。
北京であこがれの大家生活を送るのは、
なかなか難しいのです。

しかし、北京の多くの大家さんたちは、
大きなキャピタルゲインが狙えるのならば、
ちんけなインカムゲインなどいらない、
と考えています。

へたに人に貸すと、
汚されて資産価値が落ちたり、
高値で売り抜けようとした時に、
住んでいる人を追い出さなければならないなど、
面倒なことが多いので、
あえて人に貸さない、
という大家さんも多いと聞きます。

このため、北京の郊外、東四環路沿いには、
夜になると部屋の灯りがまばらにしか点いていない
ゴーストタウンのようなマンション群が
いくつもあるのです。

北京の多くの大家さんにとってマンションとは、
人が住むところではなく、
家の形をした投機対象なのです。


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2007年7月25日(水)

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