第766回
一番悪い席に座らせるレストラン

中国でレストランに行くと、
店内はガラガラなのに、
入口近くのどう見ても一番悪い席に
案内されることがよくあります。

このため、中国の人たちは、
案内された席に素直に座ることはまずなく、
勝手に窓際の席に座ったり、
店の奥の広い席に座ったりするのです。

日本のレストランの場合、
早く来た順番に良い席に案内するのが
常識だと思うのですが、
どうして中国では逆なのでしょうか。

1つの理由は、
後から来た客がうるさい客だと、
「こんな悪い席しか残ってないのか。
なら、他の店に行こう」となってしまうからです。
このため、悪い席から埋めていけば、
こうした機会損失を防ぐことができます。

おとなしい客がそのまま座ってくれたら
ラッキーですが、
勝手に他の席に座る客が来ても、
心の中で「チッ」と舌打ちをしながら、
勝手に座らせておけば良いのです。

もう1つの理由は、
入口近くに客を座らせておけば、
他の客を呼び込む呼び水になるからです。

中国では、お客さんがたくさん入っている店は、
「こんなにお客が入っているなら、
おいしいに違いないし、
食材も回転が速いから新鮮に違いない」
と判断されて益々繁盛しますが、
閑古鳥が鳴いている店は、
その逆で誰も寄り付かなくなってしまいます。

また「たくさんのお客さんが入った繁盛店の
活気のある雰囲気の中で食事をすると、
自分自身の運気も上昇する」
と考える人も多いようです。

このため、入口から見えるところに
客を座らせて繁盛店を装えば、
お客がどんどん入って、
本当に繁盛してしまうことが期待できるのです。

案内された席に素直に座るおとなしい日本人は、
往々にしてこうした腹黒いレストラン側の思惑に
まんまとはまってしまいます。

まったく、食事をするときぐらいは
リラックスさせてほしいものですが、
中国でレストランに行くときには
「オレはこの席で食事がしたい!
この席で食事できないなら他の店に行く!」
というぐらいの意気込みでいないと、
いいようにされてしまうのです。


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2007年9月14日(金)

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