第776回
低下する「大卒」の価値

中国の大学進学率は、昨年22%に達し、
2010年には25%に達することが予想されています。
大学入学適格年齢に達した人の4人に1人が
大学に入学する、ということはすごいことですが、
一方で「大卒」の価値が
どんどん低下しているのも事実です。

これだけの好景気を謳歌する中国において、
大学新卒者の就職戦線で
「超」の付く氷河期が続いている理由は、
採用を行う企業側が新卒者より
即戦力の中途採用者を求めている、
ということもあるのかもしれませんが、
一方では、大学進学率上昇による新卒者の増加が、
経済成長による雇用の増大をはるかに上回っている、
ということもあるのではないでしょうか。

以前、NHKの特集で、
中国の農民夫婦が家も田畑も全て売り払って
娘の大学の学費を捻出し、
自分たちは食うや食わずの生活をしている、
というレポートがありました。

これは農民夫婦にしてみれば、
農民という「カースト」から抜け出して
家族の人生を一発逆転させる最後の賭けなのでしょうが、
「大卒」がもはや「学士様」ではない現在の中国においては、
結果的に自爆行為となってしまう可能性も
なきにしもあらずです。

そんな中国で先日、
「大学を卒業したのに就職できなかった」と大学を逆恨みし、
学生数百人が大学の学生寮の部屋を破壊して回り、
学校の構内で家具を燃やすなどして暴れる、
という事件が起きました。

舞台となったのは福建省泉州市の「仰恩大学」。
この大学は私立大学で、4年間の学費は6万元(96万円)と
中国の物価から考えればかなりの高額なのですが、
大学の知名度が低いため卒業生の就職は難しく、
学生たちは「大学にだまされた」と言って
暴れたのだそうです。

この暴れた学生たちは、
「大学さえ卒業すれば就職できる」と考えていた時点で、
既に、世の中の流れを読み違えています。
そして更に彼らは、自らの判断ミスを
大学のせいにして暴れる、という
とんでもない甘ったれ坊主どもですので、
なにかの間違いで就職できたとしても、
ロクな仕事ができないのではないでしょうか。


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2007年10月8日(月)

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