第820回
中国製品の安さに頼らない経営

今後、中国製品は元高の進行と労賃の上昇により、
徐々に競争力を失っていくことが予想されます。
しかし、中国製品の値段が高くなるといっても、
今まで先進国の1/5のコストで作れたものが、
1/4とか1/3になってしまう、ということですから、
「世界の工場」としての中国の優位は、
しばらくは続くのではないかと思われます。

問題は「中国から1/5のコストのものが入ってくる」
ということを前提に経営をしている先進国の企業は、
1/4とか1/3になると経営が成り立たなくなってしまう、
という点です。

一部の企業は生産委託先を中国から
もっと発展の遅れた国に移すことによって、
1/5のコストを維持しようとするでしょうが、
それもできない企業は中国企業と
厳しい値引き交渉をすることになります。

これはある意味、非常に危険な行為です。

今回の鉛入りおもちゃの件もそうですし、
農薬入りの野菜もそうですが、
中国製品は安く買おうとするとロクなことが起きません。

もちろん中国企業の中には悪意を持って、
そうした毒入りの製品を作る会社もあるかもしれませんが、
ほとんどの会社は全く罪の意識のないまま、
赤字を避けるためにコストの安い「鉛入り塗料」を使い、
除虫コストの安い農薬を使うのではないかと思います。

今回の鉛入りおもちゃ問題を受けて先進国企業は、
何億円もするX線検査装置を導入して、
鉛を始めとする重金属を検査、
合格品だけを輸出させる、という対策を講じました。
本来ならば先進国企業は、
設備導入コスト、検査コストなどを全て含めて、
中国製品のコストを算出すべきでしたが、
そうしたところをケチって、
何しろ安く買うことだけに主眼を置いたがために、
膨大な回収費用とブランドの失墜という
巨大な損失を被る結果となりました。
安物買いの銭失いとは正にこのことです。

今回の鉛入りおもちゃ問題は先進国企業に対し、
中国での安い生産コストを背景とした価格競争で
消費者をひきつけるのではなく、
ちょっと高くても安全で付加価値の高い製品を
消費者に届けることを目的に
企業経営をすべきなのではないか、
という警鐘を鳴らしているように思います。


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2008年1月16日(水)

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