第821回
中国がタックスヘイブン?

日本ではあまり大々的に報道されていませんが、
今年1月1日から中国の企業所得税が
従来の33%から25%に引き下げられました。

課税所得が1,000万元(1.5億円)ある企業ならば、
純利益は670万元(1億50万円)から
750万元(1億1,250万円)に増えるわけですから、
減税分だけで約12%の増益となります。

中国株投資の観点から見れば「知ったが終い」ですから、
この減税は昨年3月に第10回全人代第5次会議において
可決された時点で既に株価に折込済みなのでしょうが、
中国の実体経済の面から見れば、
今回の大幅減税により中国企業の競争力は益々強くなり、
高度経済成長の持続を後押しする効果が期待されます。

当社も子会社の外運華通も、
今まで33%の企業所得税を支払ってきましたので、
今回の減税は非常に助かるのですが、
中国に進出している一部の日本企業にとっては、
今回の税制改正を手放しで喜べない点もあるようです。

まず一点目は、
今まで外資ということで企業所得税を
15%程度に優遇されてきた製造業の日本企業は、
今回、優遇がなくなり、中国企業と同じ
25%の企業所得税が課されることになります。
そうした企業にとっては今回の措置は大増税となります。

これは中国政府の「もう外資企業を優遇によって誘致して、
外貨を稼いでもらったり、雇用を創出してもらったりする
必要がなくなりました」という意思の表れであり、
今後、そうした日本企業は同業の中国企業と同じ土俵に立って、
生きるか死ぬかの真剣勝負をすることになります。

もう一点は、
今回の減税により移転価格の問題が出てくることです。

日本の法人税法では、企業所得税が25%以下の国や地域は
租税回避地、いわゆるタックスヘイブンとみなされます。
今回の減税で、中国は日本のタックスヘイブン税制の
対象国に入ってしまうのです。

中国をタックスヘイブンとして
利用する日本企業はないと思いますが、
日本企業の本社が中国の子会社と取引をして、
日本側で発生するはずの利益を
故意に税率の低い中国に移し替えた、とみなされれば、
日本の税務当局から
脱税の嫌疑をかけられる可能性もあります。

当社は優遇税率を享受していたわけではありませんし、
日本の本社もありませんので、
今回の減税は手放しで嬉しいのですが、
一部の日本企業にとっては、
やっかいな問題が発生する可能性もあるようです。


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2008年1月18日(金)

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