第828回
ホームステイで見た中国農村の実態

昨年末、中国の孫農相は、
2007年の中国の農民1人当たりの年間純収入は
4,000元(6万円)を超え、
4年連続で前年比6%以上の収入増を
達成できる見込みであることを発表しました。

孫農相の分析によれば、農民の収入が増加している理由は、
農産物の価格上昇、都市部への出稼ぎ農民の増加、
政府による補助金の増加などが挙げられるそうです。
春秋戦国時代から2600年にわたって
徴収されてきた農業税が2006年に廃止されたことも、
農民の収入増に大きく貢献しているものと思われます。

ただ、1人当たりの年間純収入が4,000元ということは、
1ヶ月の収入は330元(5,000円)余り。
夫婦共働きでも世帯収入は月660元(1万円)ですから、
いくら農村の物価が安いといっても、
都市部との格差は益々広がっているのが現状です。

しかし、中国の農民は、都市部の人たちが
贅沢な暮らしをしていることをねたむようなことはなく、
また都市部に住みたいとも思わず、
何しろ今年の生活が去年よりも
少しでも良くなればそれで良しとする、
という人が大部分なのではないかと思います。

私は以前、中国内陸部の農村の
王さんという農家のお宅に
ホームステイをしたことがあります。
ホームステイ、というとカッコ良いですが、
ガスも水道もなく、
トイレは畑の隅っこで囲いもなにもなし、
という非常に原始的な生活体験でした。

私は「中国の農民は役人に搾取されたり、
土地を強制収用されたりして、
帝政ロシアの農奴のような悲惨な生活を送っている」
というイメージを持っていましたので、
王さんがどんな生活をしているのか興味津々だったのですが、
予想に反して王さんと王さんの奥さんは、
現金収入こそほとんどないものの、
自分の畑で採れた穀物や野菜や果物を食べて、
結構、のんびりと幸せそうに暮らしていたのでした。

王さんの家にはテレビがありましたので、
彼らはそれで北京や上海の発展した街の様子や、
都市部の人たちの近代的な生活を見ることができるのですが、
自分たちとは全く別世界の話であると認識しており、
都会に行けばおカネをたくさん稼げるのだとしても、
この村を離れるつもりはない、とのことでした。

王さんの家がたまたま余裕があっただけかもしれませんが、
私は王さん夫婦ののんびりとした穏やかな暮らしぶりを見て、
中国の農民に関しては、現金収入の額だけでは
その生活の豊かさや幸せの度合いを測ることはできないな、
と思いました。


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2008年2月4日(月)

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