第829回
農村が汚職の温床となるワケ

現金収入はほとんどないながらも、
のんびりと幸せそうに暮らす王さん夫婦ですが、
お話を聞いていると、問題がないわけではありません。
こんな田舎の農村でも役人の汚職があるのです。

王さんの住む村から5kmほど離れたところに、
村(つん)の上の行政単位である
鎮(ぢぇん)の人民政府とちょっとした街があります。
その鎮の人民政府に行って、
何か証明書を取ろうとしただけでも、
役人への飲食の接待や付け届けが必要なのだそうです。

日本ではありえないことですが、
町役場に行って住民票を取ろうとしたら、
町長や助役を接待していなかったので、
なんだかんだ理由を付けられて断られる、
ということが中国の田舎では普通に起こるようです。

こうしたことに対し、王さんは憤るわけでもなく、
ごく当然のこととして受け止めているようです。
「上に政策あれば、下に対策あり」というか、
「長いものには巻かれろ」というか、
接待や付け届けは証明書を取る際にやらなければならない、
一つの手続ぐらいにしか考えていません。

逆に、普段から役人との良い関係を築いておけば、
いざという時に、たいていのことには
目をつぶってもらえますので、
むしろ、積極的に接待や付け届けをしておきたい、
という気持ちさえ伺えます。

こうした鎮では、鎮長も鎮の役人も、
警察署長も学校の校長もみんなグルですので、
一生村に住み続けるのであれば、
彼らを敵に回して良いことはありません。

昔、「ゾンビ」という映画がありました。
「ゾンビ」にかみ殺されると、
その殺された人が「ゾンビ」として生き返りますので、
街中が「ゾンビ」だらけになってしまいます。
このため、友達の家に助けを求めに行っても
「ゾンビ」になった友達に襲われる、
警察に助けを求めに行っても
「ゾンビ」になった警察官に襲われる、
というとても怖い映画です。

中国の田舎はどこに行っても「ゾンビ」だらけですので、
そんなところで「役人の汚職反対!」を叫んでも、
かみ殺されるのがオチです。

そんな田舎で快適に暮らすには、
自分から進んで「ゾンビ」になって、
他の「ゾンビ」と仲良くするしかないのです。


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2008年2月6日(水)

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