第830回
羊のようにおとなしくて従順な中国の農民

王さん夫婦の話を聞いていると、
中国の農民は国家権力に対して
羊のようにおとなしく従順であることがわかります。

「長いものには巻かれろ」とばかりに
ただただ盲目的におとなしく従順、と言うよりは、
むしろ、自分と家族の穏やかで幸せな生活を守るために、
しなやかに、且つ、したたかに、
国家権力との折り合いを付けている、
と言った方が正確かもしれません。

彼らには大都会での贅沢な生活にあこがれる気持ちはなく、
何しろ国家権力に生活を侵されることなく
穏やかで幸せに暮らしていきたい、と考えており、
毎年、少しでも暮らし向きが良くなっていくのであれば、
それで十分に満足しているように思います。

中国の農村を格差社会の観点から見れば
「都会と比べたら、ガスも水道もなくてかわいそう」なのですが、
彼ら自身にしてみれば「10年前と比べたら、
電気や電話があるのでとても便利になった」なのです。

こんな羊のようにおとなしくて従順な中国の農民たちが、
国家権力に対して牙を剥いて全国各地で暴動を起こしたり、
何度逮捕されても繰り返し北京まで陳情に来たりしている、
というニュースを聞くと、
地元の共産党の役人がよっぽど無茶苦茶なことを
したのではないかと思わざるを得ません。

証明書を取ろうとする人に、
接待や付け届けを要求するぐらいにしておけば良いものを、
もっと巨額の利益を手中に収めるために、
不動産開発業者とグルになって、
農民から土地を取り上げたりしたのでしょう。

私は日本でよく見かける
「中国はもうすぐ崩壊する」などという本は
全く信用していません。
しかし、唯一、中国共産党が政権の座を追われ、
中国全体が大混乱に陥る可能性があるとすれば、
それは、中国共産党の田舎の木っ端役人が
限度を越えた無茶苦茶なことをして、
農民たちの穏やかで幸せな生活を侵し、
それに怒って牙を剥いた農民たちの暴動が全国に広がる、
というシナリオです。

中国の農民は9億人もいますが、
普段は羊のようにおとなしくて従順ですので、
中国共産党は普通にしていれば、
彼らを治めるのはそれほど難しいことではないはずです。

にもかかわらず、
暴動や陳情が頻発するということは、
一部の地方の共産党幹部は、
よっぽど無茶苦茶なことをしているのではないか。
王さん夫婦の穏やかで幸せそうな生活を思い出すと、
そう思えてくるのです。


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2008年2月8日(金)

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