第832回
お年寄りに席を譲るのは「当たり前」?

中国の人たちはバスや地下鉄に乗る時にも、
降りる人を待たずに突進しますので、
混雑したバス停や地下鉄の駅での乗降シーンは、
叫び声が飛び交うちょっとした戦場のようになります。

驚くのは、そんな戦闘をくぐりぬけて、
必死の思いで座席を確保した人も、
お年寄りが乗ってくると、
何の躊躇もなくスッと席を立って、
お年寄りに席を譲ることです。

中国のバスや地下鉄にも、
お年寄りや妊婦、身体障害者の人たちのための
優先席はありますが、
中国の人たちは優先席でなくても
ほとんどの人がそうした弱者の人たちに席を譲ります。

これだけ公衆マナーがなっていない国にも関わらず、
この点だけは日本よりずっと優れているのです。

不思議に思って、中国人の友人に
「中国の人たちはどうしてバスや地下鉄で
お年寄りに席を譲るのか?」という質問をしてみたのですが、
そんなことを訊かれること自体が意外である、といった感じで
「当たり前だから」という答えが返ってきました。

逆に「日本人はバスや地下鉄にお年寄りが乗ってきても
席を譲らないのか?」と質問されましたので、
「優先席に座っていたら当然譲るが、
普通の席だったらせっかく確保した座席だし、
自分も疲れているので寝たふりをしてしまうかもしれない」
と答えたところ、
「体力のないお年寄りはもっと疲れているのに、
どうしてそんなひどいことができるのか!」
と怒られてしまいました。

戦場のような乗降シーンで叫びながら戦う姿と
お年寄りを見るや否やスッと席を立って席を譲る姿は、
いかにもアンバランスですが、
彼らにとっては両方とも
「当たり前」のことであるようです。
日本人と中国人では、お互いが持っている
「当たり前」の感覚が全く違うんですな。

日本でも優先席以外の席でみんながお年寄りに席を譲ることが
「当たり前」になるといいな、と思うと同時に、
中国でもバスや地下鉄に乗る時に、
降りる人が全員降りてから乗り込むことが
「当たり前」になってくれるといいな、と思いました。


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2008年2月13日(水)

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