第859回
中国人観光客にたくさん買ってもらうには

中国の人たちが日本で大量に買物をする3つ目の理由は、
自分のモノだけでなく、
自分のいわゆる「身内」とみなしている人全員に、
お土産を買って帰らなければならないからです。

「身内」とは親兄弟、親戚などの血縁関係者の他、
「この人のためなら、全財産を投げ打っても良い」
というぐらい親しい関係の友達をも含む概念です。

中国の人たちは「身内」以外の人には
一銭たりとも無駄なおカネは使いたくない、と考えますが、
「身内」の人たちとは運命共同体、
そしてサイフも共有、という感覚ですので、
ここでケチなお土産をあげようものなら、
「身内」としての常識を疑われますし、
今後、「身内」サークルの中で
生きていきづらくなってしまいます。

このため、日本に旅行に行った中国の人たちは、
中国には売っていない日本ならではのモノ、
中国で売っているより品質が良いモノ、
中国人なら誰もが知っている日本の有名ブランドのモノ、
などという観点からお土産を選び、買いまくるのです。

私が以前、丸紅の東京本社で働いていた時、
中国企業の幹部の人たちの訪日出張スケジュールを
何度か組んだことがあるのですが、
スケジュールを仕事の予定で埋めてしまうと、
ものすごくイヤがられたものです。
そして、顧客訪問の予定を削って作った時間に、
秋葉原の電気街に連れていくと、
彼らは大喜びで10万円以上もする電気製品を、
ポンポンと何個も買っていくのです。

当時の私は「仕事で東京に出張して来ているのに、
なんて不真面目な人たちなんだ!」と憤慨していたのですが、
上記のような「身内」の事情を知ってみると
「中国の人たちもいろいろと大変なのね」
と思えるようになりました。

現状、中国人の日本への観光旅行は、
ツアー参加に限られていますが、
今後、自由旅行が解禁され、
中国人観光客は更に増加することが予想されます。

そうした状況に備えて、日本の小売業界は、
中国語対応をするだけではなく、
中国の人たちがどのような理由で日本で買物をするのか、
ということを良く理解し、
それに対応した品揃えを研究していく
必要があるのではないか、と思います。


←前回記事へ

2008年4月16日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ