第862回
乱高下を繰り返す中国株と堅調な実体経済

乱高下を繰り返す中国株の値段をよそに、
中国の実体経済は非常に堅調です。

中国の経済成長は内需主導ではなく、
輸出と投資主導でしたので、
サブプライムローン問題でリセッションに入った
アメリカ向けの輸出が減少し、
今年は6年ぶりに経済成長率が
10%を割り込むことが予想されています。
日本では「中国の破竹の経済成長もここまでか」
というような報道もされているようです。

しかし、10%を割り込むと言っても、
最も低い予想をしている
イギリス・バークレイズキャピタルでさえ
その数字は8.8%。
決して低い成長率ではありません。

そして、先月の全人代で採決された
今年の目標成長率はそれよりもさらに低い8%。

景気の過熱を抑えて、
ほどほどの経済成長を長期間にわたって続け、
国内情勢の安定を図りたい中国政府にとっては、
いろいろと小さな問題はあるにしても、
大局から見れば理想的な状況に近づきつつある、
といったところではないでしょうか。

常識的に考えれば、
中国の経済が1年間に10%前後成長する、ということは、
中国企業全体が生み出す付加価値も10%前後上がる、
ということですから、
中国株の株価指数も毎年10%ぐらいずつ
上がっていくのが本来のあり方だと思います。

それが、1年で倍になったり、
半年で半分になったりするわけですから、
株式市場の参加者の人たちがいかに
実体経済や各企業の本当の価値を見ずに、
株価の上がり下がりだけを見て
売り買いを繰り返しているかがわかります。

特に、株式投資初心者の中国の人たちが
参加者のほとんどを占めるA株の株価は
上がり下がりが激しいです。

昨年の中ごろぐらいまでは、
株価は一本調子で上がっていましたので、
「何しろ早く買わないと損だ!」ということで、
全財産を投入したり、
親兄弟からおカネを借りてまで投資したりする人が
続出しました。

それが昨年後半からは株価は一本調子で下がっていますので、
逆に「何しろ早く売らないと損だ!」ということで、
いわゆる「狼狽売り」をしている人が多いため、
株価の下落が止まらないのではないでしょうか。

ここ1年のA株市場の乱高下で、
中国ではかなりの人が痛い目に遭っているものと思われます。
「二度と株には手を出さない!」という人も多いでしょうが、
これをきっかけに
「実体経済の状況や各企業の本当の価値を研究してみよう」
という方向に考える人が増えてくれば、
中国の株式市場はより成熟し、
実体経済を無視した株価の乱高下は
少なくなってくるのではないか、と私は思います。


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2008年4月23日(水)

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